リスクヘッジを考えた生き方
ずっとアルバイトをしながら30歳をすぎたアーティストを目指している人と話しをした。彼は結婚をしていて子どももいる。妻や親に「いつまでもアルバイトをしていないで働きなさい」とここ数年はお決まりのようにいわれてきたという。そこでできるだけ時給の高いアルバイトを探して転々としてきたという。夢は楽しいがアルバイトは続かないという。なぜかと聞くと「興味がないから仕事が覚えられずダメ人間扱いされ、職場で怒られてばかり」。でも生活があるから高いアルバイトのところを探してきた、という。高いアルバイトといっても深夜に働いているわけではないので、1000円~2000円までの時給のこと。
そうして彼は、10年以上、転々とこうした時給のアルバイトをしてきたという。私はいった。「好きなことに近いアルバイトをすぐに変えたら?」と聞くと「一度も好きと思ったアルバイトなんてない。食うためと割り切っているから」という。「ギャラリーやアートに関わっていたい。自分の夢の周辺で仕事ができたら最高だけど、そんな世界は時給が安い」といった。
そうだろうか。どんなビジネスも時給を払うということは、そこに何らかの労働が生じている。興味もない、やる気もない人は辞めてほしいが、もしも意欲的でどんどん仕事を覚えて、前向きだったら、ギャラリーを任せたいと思うかもしれない、世界のオークションに仕入れにいけ、といわれるかもしれない・・・。夢があるから、夢と関係ないアルバイトを10年以上も続けて、何のキャリアもついていないという彼に、私は憤りを感じてしまった。「そんなバイト辞めたら。辞めて自分が楽しい、燃えられるという場所で仕事をしなよ。夢じゃないと思っているアルバイトの時間も夢に近い場所にして、仕事の時間中は、本気で目の前の仕事のために燃えて、ちゃんとプロになったら」といった。「がんばって時給を少しずつ上げてもらえる場所にいったほうが、目の前の時給が高くても永遠にぐるぐるその場にいるのじゃ、未来は何もないし、そんなやる気のない奴が、年をとってきたら、時給は安くなっていくよ」と伝えたけど、もう話すのも疲れてきた。
少し前に、元プロ野球の花形ピッチャーだった人が、肩を壊して仕事を失い、殺人事件を起こしたというのがあった。元プロボクサー、元相撲取り・・・子どもの頃から夢をおっかけ、スターになれた人は一部。またスターになっても数年が花。サッカーのゴン中山が、サッカー選手の再就職を考える会を作っていると聞く。周囲の大人も含めて、夢が見れそうなら人は騒ぐし羨望の目でちやほやする。でも、夢が叶わない生き方をしていると、すぐに「どこでもいいから勤めろ」「安定しているからいい」とか「定職につけ」という。
そうじゃない。夢も仕事も同じこと。同じ自分の時間を使うのなら燃えられる時間、深められる時間、もっと学びたい時間に使うべきだ。そうすれば絶対にほっといても時給は上がる。価値のある人とはそういうものだ。人がどう生きていくことが大切なのか。人の一生は、道のりなのだから未来に向かって意味ある生き方、価値ある生き方って何なのかを教えていく必要があると思う。
生き方を知らない大人が増えている。この大人がすでに子どもの親になっている。
私だって人のことはいえないと思う。
でも、何かみんな「夢」を勘違いしている気がする。スターになることや売れっ子になることが夢家じゃない。「夢」とは「自分として燃えて生きてきたか」という道のりだと思う。「夢」に終わりはない。死ぬまでが「夢」なのだ。そういう意味ではリスクヘッジという思考が大切だと思う。今、燃えている自分が、そこで何をつかみ、次に何に生かすのか。これがダメだったから、もう何もない・・・なんて生き方はしたくない。
リスクヘッジというと大げさかもしれない。結局、何をするかではなく、「どうなってもつぶしのきく自分」を日々創り、「どう生きていくか」に強い大人になりたいと思う。

