市場の8割を左右する女性視点マーケティング詳解 vol.5
女性視点マーケティングの第一人者であり、株式会社HERSTORYの代表取締役でもある日野佳恵子による、本連載。第5回目は、トヨタ自動車の事例を交え、女性視点マーケティングの必要性を解説いたします。
HERSTORYは、女性視点マーケティングを専門に事業を展開しています。この連載記事では、「女性視点マーケティング」の重要性に焦点を当て、具体的な事例を交えてわかりやすく解説していきます。皆様のビジネスに新たな視点やアイデアを提供し、今後の展開に役立てていただける内容となっています。ぜひ、ご活用ください。
当初は、「女性マーケティング」と「女性視点マーケティング」という言葉の使い分けを私自身も明確に出来ていませんでした。名刺交換をすると、「女性」ということだけで「うちは化粧品とかではないので」とか「女性向けの商品ではないので」と言われることが多々ありました。
「女性視点マーケティングは、女性モノとか男性モノとかシニアモノといったくくりではない」と伝えたいが伝わらないジレンマと葛藤しました。
新井範彦氏との出会いから見えてきた女性の購買力
女性の見ているマーケットは広く「暮らし」「健康」「教育」「介護」「レジャー」とありとあらゆる分野に関係し、それらの消費財を主に購入し、誰かに渡し、誰かに意見し、クチコミし、SNSで発信しているのです。女性にとっての当たり前は、ビジネスでの当たり前ではなく、さまざまな場面でフラストレーションを持ったのです。
明確に言語化できたのは、2004年、トヨタ自動車国内営業部のカローラ営業本部本部長の新井範彦氏(当時)との出会いでした(詳細は著書『「ワタシが主役」が消費を動かす――お客様の“成功”をイメージできますか?』(ダイヤモンド社)に掲載)。
2004年、トヨタ自動車国内営業部のカローラ営業本部本部長の新井範彦氏(当時)より、「女性が見る購入決定要因と接点となる販売ディーラーのあり方を調査したい」というご依頼がありました。
車を購入する男性の75%は、妻の意見が大きく関与しているというデータがあったからです。さらに調査したところ、女性はたとえドライバーであっても、「車のことはわからない」「興味が低い」「わからないことがわからない」という姿が浮き彫りとなりました。
調査で見えてきた車に求めていたコト
当時、すでに女性ドライバー数は登録者数で見ても4割を超えていたのです。「本人がドライバーであるにもかかわらず、車のことは得意ではない。しかし、夫の車の購入に75%は関与している」という状況は何を指すのでしょうか。
仮説ではありましたが、車を見ながら、車以外のことを関連させて関与するのではないかということが考えられました。
現実に夫婦の購入場面で、夫はレザー張りの内装を求め、妻は子どもが食べモノで汚したり、酔って吐いたりした時の状況に対応できる内装を訴えてけんかになったなど、多くの現実が見えてきたのです。
そして新井氏が発令したのが、「女性視点マーケティング」活動でした。
女性視点マーケティングは、女性向けのキャンペーンやプロモーションではない
従来のマーケティングプロセスのすべてを疑ってかかってみる活動
女性視点から見れば、たとえばメカに強くない男性や高齢者などへのアプローチにも有効になる可能性がある
というものでした。
その後、当時の全国のカローラ店ディーラーには、女性社員を中心にプロジェクトが結成され、従来の売り方と並行して、女性の視点から気になることを洗い出して販売に活かすという「女性視点マーケティング」の活動が展開されました。
続きは、後編でお伝えします。
次回は、本記事の後編です。どのようにして女性視点マーケテイングが研究され進化したのか、女性視点マーケティングを成功に導く心構えをお伝えします。
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日野佳恵子
株式会社HERSTORY(ハー・ストーリィ)代表取締役 1990年創業 タウン誌の編集長、広告代理店のプランナーを経て、結婚、出産を機に専業主婦を経験。女性のクチコミ力、井戸端好きに強い衝撃を覚え、広告よりクチコミのパワーが購買に影響を及ぼしていることを確認。一貫して男女の購買行動の違いに着目したマーケティングを実践し、女性客マーケティングという独自分野を確立。多数のコミュニティや実店舗を自ら運営。10万人の生声、3万件に及ぶアンケート分析、5万人以上の男女購買行動を研究。
【著書】
「クチコミュニティ・マーケティング」
「女性たちのウェルビーイング」
「女性たちが見ている10年後の消費社会」等ベストセラー多数。
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