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  • 【株式会社スピングルカンパニー】「売りたい層」から「支持される層」へ。レディース市場での顧客理解を深め、ブランドの可能性を広げる

    株式会社スピングルカンパニー 代表取締役社長 内田 貴久 氏 広島県府中市に本社を構える株式会社スピングルカンパニーは、国産ハンドメイドスニーカーを展開するシューズメーカーです。同社は以前から、HERSTORY独自の「女性が商品を選ぶ理由を可視化する」顧客分析に関心を寄せていました。そうしたなか、広島銀行の紹介をきっかけに、HERSTORYとの共創によるレディース事業のブランド価値向上プロジェクトがスタートしました。今回の取り組みはレディース事業に特化したもので、顧客視点から商品企画や情報発信の方向性を見直す契機となりました。 株式会社スピングルカンパニー 代表取締役社長 内田 貴久 氏 〈プロフィール〉 東京都出身。大学卒業後、大手スポーツアパレルメーカーに入社。 1983年 株式会社ニチマン入社 1993年 株式会社ニチマン 代表取締役社長に就任 1997年 有限会社スピングルカンパニー設立(2007年に株式会社に商号変更)、代表取締役社長に就任 >株式会社スピングルカンパニー ■共創プロジェクトの目的 ●レディース分野での顧客理解を深め、ブランドの方向性を再定義すること ●社内で設定していた想定ターゲットに加え、実際の顧客データや声をもとに“現実に近いペルソナ”を構築すること ●社内に顧客起点の思考を浸透させ、意思決定の基準を共通化すること ■共創プロジェクトの内容 1. 現状把握と課題整理 既存ペルソナと実購買層の差異を確認し、社内での仮説・課題を明文化。 2. HERSTORYによる女性インサイト分析 女性インサイト調査から、スピングルのレディース購買層の価値観・行動特性を可視化。 3. ペルソナ再構築ワークショップ 分析結果をもとにリアルな顧客像を具体化。 “現在の支持層”を起点とした新ペルソナを策定。 4. 共有・運用 新ペルソナを社内で共通言語化し、商品企画やコミュニケーション設計への活用を開始。 ■​導入成果 ●実購買データをもとにした顧客像を社内で共有し、部門間の意思統一を実現。 ●商品企画・発信方針を「現状の支持層」起点に整理。 ●データに基づく議論と意思決定が可能となる基盤を構築。 ●ペルソナを社内の共通言語として定着させ、議論のスピード・精度を向上。 ■INTERVIEW インタビュアー:株式会社HERSTORY 代表取締役 日野 佳恵子<プロフィールはこちら > ■女性市場での販売再拡大に向け、スピングルが見直した原点 スピングルカンパニーの生産拠点は、親会社である株式会社ニチマンの工場を引き継いだものです。ニチマンは1933年にゴム加工メーカーとして創業し、その後製靴事業に進出しました。1960〜80年代には、子ども靴や婦人靴、布製カジュアルシューズの製造を得意とし、年間約350万足を生産。当時、靴用素材が主流だったなかで、アパレル用の布を使用してシューズを作り出したことがヒットにつながり、レディース市場で大きな実績を築きました。このような背景を踏まえ、スピングルカンパニーではレディース領域の可能性を見直しました。 スピングルが展開するレディースシューズ。 ■「社内の声」だけに頼りすぎていた、ペルソナ設計の壁 同社ではこれまでも社内でペルソナを作成し、ブランドのターゲット層を定義してきました。しかし、主に社内の仮説や想定に基づいていて、実際の購買層との間にずれが生じていました。 また、社内の多くが男性スタッフで構成されていることもあり、女性がどのような視点で商品を選んでいるのか、どのような価値を感じているのかを十分に把握するのが難しい状況でした。そのため、データに基づき実際の顧客像を明確にすることが求められていました。 内田社長も「これまでの判断は感覚的な要素が多かった。女性の購買行動をデータで把握し、根拠を持って議論できるようにすることが必要だった」と振り返ります。 プロジェクトメンバーも、「自分たちの中で描いていた女性像が、実際の購入層とは違っていた」と振り返ります。そうした課題を解決するため、HERSTORYは実際の顧客を起点とした新たなペルソナの再構築に踏み出しました。 株式会社スピングルカンパニー商品部企画課とPR課からなるプロジェクトメンバーの皆様 ■“思い込み”からの脱却。調査・分析で明らかになった支持層 HERSTORYによる調査・分析を通じて、社内で把握していた顧客層の傾向がデータとして裏付けられました。同社の商品は「価格より品質」「トレンドより信頼感」を重視する女性からの支持が高く、特に上質さや履き心地、長く使える安心感を重視するミドル層の女性に評価されていることが明らかになりました。これにより、従来から認識していた顧客層への理解をさらに具体的に深めることができました。 これまで感覚的に「きっとこの層だろう」と考えていた顧客像が、データによって初めて具体的な姿として見えるようになり、内田社長自身も「若い世代へのアプローチももちろん大切ですが、まずは今、ブランドを支えてくださっている方々をしっかり理解することが先」だと実感していました。 プロジェクトメンバーも、「自分たちの中で描いていた女性像が、実際の購入層とは違っていた」と振り返ります。そうした課題を解決するため、HERSTORYは“理想”ではなく“実際の顧客”を起点とした新たなペルソナの再構築に踏み出しました。 弊社主催の女性モニターとの体験型座談会「herVoiceカフェ会議」にも参加し商品を試着した感想をヒアリング ■ペルソナを共通認識に。社内で進む意識の統一 調査・分析の結果をもとに、スピングルカンパニーでは新たにペルソナの再構築を行いました。これまで感覚的に語られていた顧客像が、データを根拠にした具体的な人物像として整理されたことで、チーム全体の認識がそろい、社内の会話にも変化が生まれたといいます。 「ペルソナを明確にしたことで、“誰にどんな価値を届けるのか”を共通の言葉で話せるようになり、議論が具体的になった」とプロジェクトメンバーは話します。 内田社長も「データをもとに顧客像を共有できたことで、意思決定がよりスムーズになった」と述べています。 ペルソナの再構築は、単なるマーケティングツールの更新にとどまらず、レディース事業において“お客様の声を中心に考える”という企業姿勢をより明確にする契機となりました。同社では引き続き、メンズを中心とした商品企画・展開を軸に据えながらも、今回の取り組みを通じて、レディースの商品企画における奥深さと顧客理解の重要性を再認識しています。 ■ペルソナを起点に広がる今後のブランド展開 今回のプロジェクトでは、レディースシューズのペルソナの再構築を通じて顧客像を明確にし、社内での共通理解が形成されました。プロジェクトはペルソナ設計によって次のステップへと向かい、その成果は今後のブランド展開にも活用されています。 内田社長は「自社の強みと顧客の価値観の重なりを改めて確認できた。今後も女性市場や時代の変化に合わせてペルソナを見直し、ブランドの方向性をより明確にしていく」と述べています。 “売りたい層”ではなく、“支持される層”を起点に。顧客を正しく理解することがブランドの成長に直結します。このように、HERSTORYは、女性インサイトの分析を通じて企業が顧客起点でブランドの方向性を見直すプロセスを支援しています。て、ラウンジの空間が楽しいということが、大きかったんですね。いい友達に支えられましたね。 SPINGLE のプロモーションビデオ 【ハー・ストーリィ担当者】 (右)代表取締役社長 日野 佳恵子 (左)インサイトラボ 専任研究員 ​中澤紗耶子 本プロジェクトのその後の取り組みや、最新の成果報告については、下記のレポート記事にてご紹介しています。

  • 【事例】株式会社スピングルカンパニー様/レディース市場拡大「AMBY」シリーズ始動。

    2026年3月3日から5日にかけて東京、3月10日から12日にかけて大阪で開催された「スピングル(SPINGLE)」の展示会にて、女性たちの声から生まれた新シリーズ「AMBY」の第1弾となる展示を行いました。弊社はサポーターとして、株式会社スピングルカンパニーと共に本シリーズの企画・推進を担っています。 「AMBY」シリーズ発足の背景 本シリーズは、スピングルが誇る熟練の職人技術や上質なレザーを活かし、現代の女性のライフスタイルに寄り添う新しい一足を提案するために発足しました。 名称の由来である「AMBIVALENT(アンビバレント):両方・二面性」をヒントに、 スニーカー以上、パンプス未満 歩きやすさとスタイリッシュであることの両立 仕事(オン)とプライベート(オフ)の使い分け など、や花モチーフ女性が直面する多様なシーンに応える商品企画を目指しています。 展示会で使用したSP-442AMBYのコンセプト紹介POP 第1弾:彩りとディテールで深まる、定番SP-442の新たな魅力 今回の展示会では、人気モデル「SP-442」をベースに、キャリアやセレモニー、プライベートなど、あらゆるシーンで履きこなせるカラーをセレクト。さらに、足元に華やかさを添えるオプションとして、伸縮性のある幅広のリボンや丸紐など、シューレースのセレクトやパールや花モチーフをあしらった「シューアクセサリー」を提案しました。 SP-442AMBY このディレクションには、キャリアファッション戦略コンサルタント・スタイリストの西畑敦子氏が参画。プロの視点から、大人の女性がトータルコーディネートで楽しめるスタイルを提示しました。 服とのトータルコーディネートで、使用シーンをわかりやすく展示 展示会での反響と現場の声 会場では、これまでの質実剛健なスピングルのイメージを一新する、きらびやかで洗練された「AMBY」コーナーが設置されました。来場したバイヤーや代理店関係者からは、「大人の女性が履きこなすイメージが明確に伝わる」「ディスプレイの表現に感動した」といった声が相次ぎました。特に、百貨店の靴バイヤーやフランチャイズ店舗の担当者、そして社内の営業メンバーにとっても、レディース市場の可能性を肌で感じる貴重な機会となりました。 今後の展望 今後は社内の女性社員や職人の想いもより深く巻き込みながら、スピングルの誇る「上質なレザー」の魅力を活かした、女性の悩みに応える商品企画を継続していきます。「スピングルを楽しむ大人の女性をエンパワメントする」というミッションを掲げ、HERSTORYはこれからも強力なサポーターとして、このプロジェクトの成長を支えてまいります。 本レポートに記載した活動は、弊社との共創プロジェクトの一環として実施されました。プロジェクト全体の背景は、下記の記事にてご紹介しています。

  • 【サマンサジャパン株式会社】約30年前に「女性ライフコース」を導入。女性の職場領域の拡張で大きく発展へ

    ※本記事は、代表 日野の書籍「彼女は誰かのためにモノを買う」内122ページの事例記事を転載したものです。 サマンサジャパン株式会社 >お客様公式サイトはこちら 約30年前の1990年代、初めて女性の「ライフコース」を実践に導入した事例が、山口県周南市のビルメンテナンス会社・サマンサジャパン株式会社(導入当時の社名:建物保全株式会社)です。 求人難という課題に対し、経営側の覚悟と女性目線に合わせた柔軟な雇用スタイルを提示したことで、企業を持続・発展へと導く画期的な取り組みとなりました。 1. 課題と背景:「30代・40代の女性が集まらない」求人獲得の苦戦 当時の社長・小野英輔氏(現会長)からの最初の相談は、「若い女性が清掃員として応募して来ない。30代40代の女性にぜひ来てほしい。どうすればよいのか」というものでした。 当時のビルメンテナンス業はパート・アルバイト契約が中心で、働いている人の年代は70代〜80代が多く、30代・40代の女性を集めるのは至難の業でした。 そこでご提示したのが「女性のライフコース図」です。 30代・40代の女性は子育て期であり、収入はもちろん重要ですが、最も優先されるのは「子どものお迎えや病気などの急なトラブル時に帰れるか」という勤務の柔軟性です。働きたくても働けない条件のままでは人は集まりません。経営側が彼女たちの立場に合わせた雇用スタイルへと変更する覚悟が求められていました。 小野社長は「よい人が来なければ未来はない」という強い覚悟を持ち、この提案に全面的に理解を示されました。 2. 施策・取り組み:女性採用に必要な7つの柱と「サマンサクラブ」 サマンサジャパンでは、コンセプトに『魅せる清掃 ササっと、サマンサクラブ』を掲げ、採用する女性たちの名称を「サマンサクラブ」と命名しました。 採用側の意識改革、採用条件の見直し、労働環境整備を推進するため、以下の「7つの柱」を立てて実行しました。 チラシのビフォー(左)、アフター(右) 女性採用に必要な7つの柱 意識:採用する側の受け入れ体制構築と女性雇用の理解学習 イメージ:ロゴ、イラスト、カラーなど視覚的な演出 リクルート:30代・40代の女性が選ぶ働き方に合わせた採用(登録制勤務、短時間選択、説明会方式など) 教育:おもてなしの心、清掃技術、顧客対応、技能向上 環境:制服、使用しやすい機器、着替え室、休憩室の整備 育成:マネージャー制度、正社員雇用等のキャリアアップ施策 管理:責任者育成、労務管理、顧客管理、業務管理など 求人募集においても単なる「時間」や「場所」といったスペック情報だけでなく、「仕事を通じて生活に何が得られ、どう貢献できるのか」を伝えるチラシを作成し、発信していきました。 3. 成果とその後:募集20名に対して100名以上が応募する大成功へ これらの取り組みにより、以下のような大きな成果が生まれました。 応募数の急増:過去は20名の募集に対して半分も集まらず苦戦していましたが、取り組み後は一度に100名以上が応募する大成功となりました。 業界を超えた注目と評価:「おもてなし」教育にも積極的に取り組み、経済産業省「おもてなし経営企業選」に選出(平成25年)されたほか、成功企業として書籍化(『サマンサ魔女の笑顔が会社を伸ばす』井上邦彦 著、生産性出版)されるなど、大きな注目を集めました。 4. 女性インサイト(深層心理)の分析:「本当はちゃんと働きたい」に応える仕組みづくり 家事や育児が生活の中心にある時期の女性にとって、短時間勤務は今でいう「隙間バイト」に近い感覚と言えます。しかし、この時期の女性たちには「本当はちゃんと働きたい」という深い本音(深層心理)が存在します。 単に「短い時間で働ける」というメリットだけではなく、以下の3つの要素を「7つの柱」に組み込んだことがポイントです。 「時間」(柔軟に働ける環境) 「やりがい」(おもてなし教育や顧客対応) 「将来に向けたイメージ」(研修やキャリア制度、正社員・マネジメント層への道) 「今はこうだけれど、いつかは……」という感情に寄り添い、成長やキャリアの道筋を体系化したことで人材の質が向上し、将来の幹部候補育成へとつながる流れが完成しました。 5. まとめ:女性のライフコースに応える価値 サマンサジャパンの事例は、「女性採用を一括りにせず、ライフコースから構築した」先駆的な成功例です。 「いま、どのライフコースを歩んでいる女性なのか」を明確にすることで、抱えている悩みやストレスが見えてきます。その解決策を施策に取り入れることで女性からの共感が生まれ、意欲の高い人材が集まる組織づくりが可能になります。

  • 【第1回】売上が伸びない会社ほど、お客様に聞いていない。

    「顧客第一」と言いながら、実は誰も本音を聞いていない。 売上は、生活者の声の中にある。 ~生活者の声を、売れる商品・サービスへ転換する実践論~ 先日、ある経営者の方とお話をしていたとき、こんな言葉を聞きました。 「最近、広告費を増やしているのですが、思うように売上が伸びないんです。」 その会社は、決して努力をしていないわけではありません。 ホームページを見直し、SNSを更新し、営業資料も新しくし、広告も出している。 それでも、期待した結果には届かない。 私は、その方に一つだけ質問しました。 「最近、お客様とゆっくり話をされましたか。」 すると、少し間を置いて、こんな答えが返ってきました。 「アンケートは取っています。」 「営業担当から報告も受けています。」 私はさらに聞きました。 「では、お客様がなぜ選んだのか、なぜ迷ったのか、なぜ離れたのかを、一時間かけて聞いたことはありますか。」 その場は静かになりました。 「顧客第一」と言いながら、顧客に聞いていない 多くの企業は、「顧客第一」を掲げています。 しかし実際には、お客様の本音を直接聞く機会は、驚くほど少ないのです。 売上データは見ています。 アクセス解析もしています。 アンケートも実施しています。 それでも、「なぜその商品を選んだのか」「なぜ選ばなかったのか」という背景まで聞いている企業は、多くありません。 数字は結果を教えてくれます。 しかし、結果が生まれた理由までは教えてくれません。 その理由を知っているのは、生活者だけです。 売上の答えは、会議室より生活者の中にある 私は35年以上、生活者へのインタビューを続けてきました。 何万人もの女性たちと話をし、暮らしを聞き、買い物の理由を聞いてきました。 そこで何度も感じたことがあります。 売上を伸ばすヒントは、会議室の中ではなく、生活者の言葉の中にあるということです。 例えば、「この商品が好きです。」という答えだけでは、本当の理由は見えてきません。 「最初に買おうと思ったきっかけは何でしたか。」 「使い続けようと思った理由は何ですか。」 「もし友人に勧めるなら、何と言いますか。」 そんな問いを重ねていくと、最初の答えとは違う、本当の理由が少しずつ見えてきます。 生活者自身も気づいていなかった気持ちが、言葉になる瞬間があります。 私たちは、その瞬間を何度も見てきました。 「聞くこと」と「商品にすること」は違う ここで一つ誤解があります。 「お客様に聞けばいい。」言葉にすると、とても簡単です。 しかし実際には、それほど簡単ではありません。 誰に聞くのか。 何を聞くのか。 どんな順番で聞くのか。 どこまで掘り下げるのか。 そして、その言葉をどう商品やサービスへ結び付けるのか。 ここには経験と技術が必要です。 例えば、お客様が 「最近、疲れるんですよね。」と言ったとします。 その言葉だけを受け取れば、「疲労回復」や「時短」という商品開発になるかもしれません。 しかし、背景を聞き続けると、 「朝、鏡を見たときに元気そうな自分でいたい。」 「家族に『疲れているね』と言われたくない。」 そんな本当の願いが見えてくることがあります。 すると、商品の考え方も、伝え方も変わります。 生活者は商品のことを話しているのではありません。 暮らしのことを話しているのです。 HERSTORYが続けてきた仕事 HERSTORYは36年間、生活者の声を聞き続けてきました。 しかし、私たちの仕事は、単にインタビューをすることではありません。 生活者の言葉を読み解き、その背景にある暮らしを理解し、企業のビジネスへ転換することです。 どんな人に話を聞くべきなのか。 何を質問すれば本音が見えてくるのか。 その言葉は、どんな市場の変化を示しているのか。 そして、商品、サービス、コミュニケーションへどうつなげるのか。 私たちは、その一連のプロセスを「生活者理解業務」と考えています。 だからこそ、生活者の声は「調査結果」で終わりません。 企業が次の一歩を踏み出すための、ビジネスの材料になります。 おわりに 企業は、売上が伸びなくなると、広告や販促、価格を見直します。 もちろん、それも大切です。 しかし、その前に一度だけ立ち止まって考えていただきたいことがあります。 最後に、お客様の声をじっくり聞いたのは、いつでしょうか。 答えは、会議室の中ではなく、生活者の暮らしの中にあるかもしれません。 私たちは、これからの連載を通して、「生活者の声をビジネスへ転換する」とはどういうことなのか、その考え方と実践をお伝えしていきます。 HERSTORY NOTE 売上を伸ばすヒントは、会議室より生活者の声の中にある。 アンケートだけでは、本当の購買理由は見えてこない。 「聞くこと」と「ビジネスへ転換すること」は、まったく違う仕事である。 生活者は商品のことではなく、暮らしのことを話している。 HERSTORYは、生活者の声を読み解き、商品・サービス・コミュニケーションへ転換する「生活者理解業務」を36年間続けてきた。 筆者プロフィール 日野佳恵子 女性インサイト総研 株式会社ハー・ストーリィ 代表取締役社長一般社団法人女性のあしたアカデミー 代表理事 島根出身。1990年創業。女性の購買行動とライフコースの関連がマーケティングに影響を及ぼすことに着眼し、女性インサイト理論を独自開発。学習院大学、成城大学、大阪公立大学の専門教授らと「男女の消費行動研究」を発表している。クライアントは生活消費財を中心にメーカーから小売まで幅広く、「女性顧客起点の専門家」として多数の企業のアドバイザーを行う。 <代表的な受賞ほか> 経済紙Forbes Japan「日本の社長100人」、日経WEBCOMPANYが選ぶ「21世紀 時代のキーパーソン51人」、日経ウーマン・ウーマン・オブ・ザ・イヤー2003リーダー部門第9位、2013世界女性リーダースティビーアワード銀賞、日本の残したい企業100社、2021Forbes Woman Award300人未満全国第2位など個人、企業活動と両面で広く評価されている。 下記よりメールマガジンの登録をいただくと、最新記事の更新をお知らせいたします。ご登録のうえ、配信を楽しみにお待ちください。 <連載ページ> 【第1回】売上が伸びない会社ほど、お客様に聞いていない。 【第2回】なぜ企業は、お客様に聞くことを避けるのか。 【第3回】アンケートを取っても売れない理由 【第4回】お客様は「商品の不満」を話しているのではない。 【第5回】ロイヤル顧客より、離脱顧客に答えがある。 【第6回】「聞く」と「読み解く」は、まったく違う仕事 【第7回】お客様の一言が、新しい商品を生む。 【第8回】売れる会社は、「顧客の言葉」で会議をしている。 【第9回】AIは分析できる。でも、お客様の本音は聞けない。 【第10回】次の市場は、いつも生活者の中から生まれる。       生活者の声を聞き、読み解き、ビジネスへ転換するという仕事。 【第11回】次の市場は、いつも生活者の中から生まれる。 売上の答えは、会議室ではなく、暮らしの中にある。 【第12回】市場は、最初から市場として現れない

  • 【第2回】AIはブランドをどう解釈しているのか

    AI時代のブランドマネジメント~AI時代になるほど生活者理解が重要となる~ 「この会社を一言で説明してください」 最近、私は生成AIにこんな質問をすることがあります。 「○○という会社を一言で説明してください。」 返ってくる答えは、意外なものでした。 AIは会社概要をそのまま読むのではありません。 「○○分野に強みを持つ会社です。」 「△△という価値観を大切にしている企業です。」 まるで初対面の人を紹介するように、一つの人物像として企業を説明するのです。 このやり取りを繰り返すうちに、私は一つのことに気付きました。 AIは企業を「理解」しているのではありません。 企業という存在を、自分なりに「解釈」しているのです。 AIは企業全体を読んでいる 以前の検索では、生活者自身が情報を集めていました。 ホームページを見る 商品ページを見る 口コミを読む ニュースを探す SNSを見る そして最後は、自分で判断していました。 ところが生成AIは違います。ホームページだけではありません。 プレスリリース ニュース記事 採用ページ 社長メッセージ 商品紹介 第三者の記事 公開されている情報を横断的に読み込み、「この会社とは何者なのか。」という一つのブランド像を組み立てています。 つまりAIは、一つのページを読んでいるのではなく、企業全体を読んでいます。 AIは企業を一人の人として見ている 私は、この変化をとても興味深く感じています。 私たちも誰かを紹介するとき、 「あの人は誠実な人です。」 「挑戦する人です。」 「人を大切にする人です。」 と、一人の人物として語ります。 AIも企業に対して同じことをしています。 この会社は、 挑戦する会社なのか 技術を大切にする会社なのか 生活者を大切にする会社なのか 社会課題に向き合う会社なのか 企業全体から、その人格を読み取ろうとしているのです。 AIの答えは、企業自身の鏡でもある もちろん、AIの回答が常に正しいわけではありません。 AI自身も、「情報が不完全な場合があります。」と前置きすることがあります。 しかし、その理由を考えると興味深いことが見えてきます。 企業から発信されている情報が一貫していなければ、AIも一つのブランド像を組み立てることが難しくなるのです。 ホームページでは「革新」 採用ページでは「人を大切にする会社」 営業資料では「価格競争力」 SNSでは親しみやすさ どれも間違いではありません。 しかし、それらをまとめたとき、「結局、この会社は何を大切にしているのだろう。」という印象になることがあります。 人が理解しにくいブランドは、AIも理解しにくいブランドです。 ブランドは情報の総和になる これまでブランドというと、 ロゴ 広告 デザイン テレビCM そんなものを思い浮かべることが多かったでしょう。しかしAI時代には、それだけではありません。 企業が社会へ発信している情報すべてが、一つのブランドになります。 ホームページだけでは足りません。 SNSだけでも足りません。 商品説明だけでも足りません。 企業全体として、 誰のために存在し、どんな価値を届けようとしているのか。 それが一貫していて初めて、AIはブランドを説明できます。 しかし、それでも終わりではない ここで、一つ忘れてはいけないことがあります。 AIが企業をどう解釈するかと、生活者がブランドをどう理解するかは、同じではありません。 AIは情報を整理して企業像をつくります。 一方、生活者は、そのブランドを自分の暮らしに置き換えて意味づけます。 この違いは、とても大きな違いです。 AIが「高品質」と説明しても、生活者は「価格が高そう」と受け取るかもしれません。 AIが「革新的」と説明しても、生活者は「少し難しそう」と感じるかもしれません。 ブランドは、情報だけでは決まりません。暮らしの中で意味を持って初めてブランドになります。 HERSTORYが見てきたこと 私たちは36年間、女性の暮らしと買物行動を見続けてきました。 同じブランドでも、ある人は「安心」と感じ、ある人は「自分には関係ない」と感じます。 企業の言葉は、そのまま生活者へ届いているわけではありません。 暮らしの中で、一人ひとり違う意味へ翻訳されています。 だから私たちは、AIがブランドをどう解釈するかだけでなく、生活者がその言葉をどう受け止めているのかを確かめることが、これからますます重要になると考えています。 おわりに AIは企業を説明できます。 しかし、ブランドの意味を決めるのは、最後は生活者です。 AIがブランドをどう解釈するのか。生活者がブランドをどう意味づけるのか。 この二つをつなぐことが、これからのブランド戦略で重要になります。 次回は、「女性は企業の言葉をどう翻訳しているのか」について、HERSTORYが35年以上見続けてきた女性インサイトをもとに考えてみたいと思います。 HERSTORY NOTE AIはホームページではなく、企業全体の情報からブランドを解釈している。 AIは企業を一人の人物のように説明する。 ブランドは、企業が発信する情報全体の総和として形成される。 AIの解釈と生活者の理解は一致するとは限らない。 AIが解釈するブランド。しかし、暮らしの中でブランドを意味づける女性の存在を、AIはまだ理解できない。 筆者プロフィール 日野佳恵子 女性インサイト総研 株式会社ハー・ストーリィ 代表取締役社長一般社団法人女性のあしたアカデミー 代表理事 島根出身。1990年創業。女性の購買行動とライフコースの関連がマーケティングに影響を及ぼすことに着眼し、女性インサイト理論を独自開発。学習院大学、成城大学、大阪公立大学の専門教授らと「男女の消費行動研究」を発表している。クライアントは生活消費財を中心にメーカーから小売まで幅広く、「女性顧客起点の専門家」として多数の企業のアドバイザーを行う。 <代表的な受賞ほか> 経済紙Forbes Japan「日本の社長100人」、日経WEBCOMPANYが選ぶ「21世紀 時代のキーパーソン51人」、日経ウーマン・ウーマン・オブ・ザ・イヤー2003リーダー部門第9位、2013世界女性リーダースティビーアワード銀賞、日本の残したい企業100社、2021Forbes Woman Award300人未満全国第2位など個人、企業活動と両面で広く評価されている。 下記よりメールマガジンの登録をいただくと、最新記事の更新をお知らせいたします。ご登録のうえ、配信を楽しみにお待ちください。 <連載ページ> 【第1回】売上が伸びない会社ほど、お客様に聞いていない。 【第2回】なぜ企業は、お客様に聞くことを避けるのか。 【第3回】アンケートを取っても売れない理由 【第4回】お客様は「商品の不満」を話しているのではない。 【第5回】ロイヤル顧客より、離脱顧客に答えがある。 【第6回】「聞く」と「読み解く」は、まったく違う仕事 【第7回】お客様の一言が、新しい商品を生む。 【第8回】売れる会社は、「顧客の言葉」で会議をしている。 【第9回】AIは分析できる。でも、お客様の本音は聞けない。 【第10回】次の市場は、いつも生活者の中から生まれる。

  • 【第10回】HERSTORYが考えるAI時代の生活者理解

    AI時代のブランドマネジメント ~AI時代になるほど生活者理解が重要となる~ この連載では10回にわたり、AI時代にブランドや生活者理解はどう変わるのかを考えてきました。 「検索される会社」から「理解される会社」へ。 AIは企業を解釈する。 生活者はブランドを暮らしの中で翻訳する。 ブランドは、「伝えたこと」ではなく、「理解されたこと」で決まる。 AIが進化するほど、生活者インサイトの価値は高まる。 暮らしを見なければ、ブランドは理解できない。 一次データは企業のブランド資産になる。 そして、ブランドは生活者との対話によって育つ。 ここまで書いてきたことを、一つの言葉で表すなら、私はこう考えています。 AI時代になっても、ブランドを育てるのは人です。 AIは暮らしを生きてはいない AIは、 情報を整理します。 比較します。 分析します。 企業を説明します。 しかし、今日一日を生きてはいません。 朝、子どもを送り出すこともありません。 仕事帰りにスーパーへ寄り、値札を見て献立を変えることもありません。 家族の健康を考えながら商品を選ぶこともありません。 親の介護について悩むこともありません。 暮らしを生きているのは、生活者です。 だから、暮らしの変化は、生活者の中からしか生まれません。 真実は、暮らしの中にある 私は35年以上、女性の暮らしを見続けてきました。 振り返ると、市場が変わる前には、必ず暮らしが変わっていました。 商品が変わる前に、生活が変わっていました。 社会が変わる前に、家庭が変わっていました。 だから私たちは、市場を追いかけるのではありません。 暮らしを見続けています。 私たちが大切にしている言葉があります。 真実は、暮らしの中にある。 この考え方は、35年前も、AI時代の今も、変わっていません。 AI時代だからこそ、人を理解する AI時代になると、どうしても、AIをどう使うか。AIへどう対応するか。という話になりがちです。 しかし私は、本当に変わるべきものは、企業の情報発信ではないと思っています。 変わるべきものは、生活者の理解の深さです。 情報が増えるほど、暮らしを見ることが重要になる。 効率が上がるほど、人と対話することが重要になる。 私は、AI時代とは、人を理解する力が問われる時代だと思っています。 HERSTORYが目指すもの HERSTORYは、女性を調査する会社ではありません。 女性インサイトを分析する会社でもありません。 私たちは、暮らしの変化を見つける会社です。 暮らしの小さな違和感を見つける。 まだ言葉になっていない願いを見つける。 企業と一緒に、新しい市場を考える。 社会へ新しい意味を届ける。 それが、私たちの仕事です。 AI時代のブランドとは 私は、ブランドとは、ロゴではないと思っています。 広告でもありません。 デザインだけでもありません。 ブランドとは、生活者が、「この会社は、私たちの暮らしを理解している。」そう感じることです。 その積み重ねが、信頼になります。 信頼が、ブランドになります。 AI時代になっても、この本質だけは変わりません。 HERSTORYから、これからの企業へ AIは、企業の情報を整理します。 生活者は、暮らしの中でブランドへ意味を与えます。 企業は、その両方と向き合う時代になりました。 だからこれから企業に求められるのは、情報を増やすことではありません。 ブランドの意味を育てることです。 暮らしとつながることです。 社会へ意味を届けることです。 私たちは、そのお手伝いをしたいと思っています。 10回シリーズのおわりに AI時代のブランドマネジメント この連載を書き始めたきっかけは、私自身がAIを使い始め、「これは、今までとは何かが違う。」と感じたことでした。 しかし10回を書く中で、私が一番強く感じていることがあります。 それは、HERSTORYが1990年から続けてきた仕事は、AI時代になって、さらに価値を持つようになったということです。 女性の暮らしを見ること。 生活者と対話すること。 企業の言葉を、暮らしの言葉へ翻訳すること。 市場より先に、暮らしの変化を見つけること。 これらは、AIにはできません。 だから私たちは、これからも暮らしを見続けます。 生活者と対話し続けます。 企業とともに、未来の市場を考え続けます。 市場は、企業がつくるものではありません。 生活者がつくります。 そして、真実は、いつの時代も、暮らしの中にあります。 筆者プロフィール 日野佳恵子 女性インサイト総研 株式会社ハー・ストーリィ 代表取締役社長一般社団法人女性のあしたアカデミー 代表理事 島根出身。1990年創業。女性の購買行動とライフコースの関連がマーケティングに影響を及ぼすことに着眼し、女性インサイト理論を独自開発。学習院大学、成城大学、大阪公立大学の専門教授らと「男女の消費行動研究」を発表している。クライアントは生活消費財を中心にメーカーから小売まで幅広く、「女性顧客起点の専門家」として多数の企業のアドバイザーを行う。 <代表的な受賞ほか> 経済紙Forbes Japan「日本の社長100人」、日経WEBCOMPANYが選ぶ「21世紀 時代のキーパーソン51人」、日経ウーマン・ウーマン・オブ・ザ・イヤー2003リーダー部門第9位、2013世界女性リーダースティビーアワード銀賞、日本の残したい企業100社、2021Forbes Woman Award300人未満全国第2位など個人、企業活動と両面で広く評価されている。 下記よりメールマガジンの登録をいただくと、最新記事の更新をお知らせいたします。ご登録のうえ、配信を楽しみにお待ちください。 <連載ページ> 【第1回】女性は企業の言葉をどう翻訳しているのか 【第2回】AIはブランドをどう解釈しているのか 【第3回】女性は企業の言葉をどう翻訳しているのか 【第4回】ブランドは「伝えたこと」ではなく、「理解されたこと」で決まる 【第5回】AIが進化するほど、生活者インサイトの価値は高まる 【第6回】暮らしを見なければ、ブランドは理解できない 【第7回】AIに選ばれる企業より、人に理解される企業へ 【第8回】一次データがブランド資産になる時代 【第9回】ブランドは、生活者との対話で育つ 【第10回】HERSTORYが考えるAI時代の生活者理解

  • 【第9回】ブランドは、生活者との対話で育つ

    AI時代のブランドマネジメント ~AI時代になるほど生活者理解が重要となる~ 私は35年以上、企業と仕事をしてきました。 その中で、ブランドが長く愛され続ける企業には、一つだけ共通点があります。 それは、生活者との対話をやめないことです。 広告が上手だからでもありません。 商品数が多いからでもありません。 新しい技術を持っているからでもありません。 暮らしの変化に耳を傾け続けています。 それが、本当に強いブランドを育てています。 ブランドは企業だけでは育たない 企業は、商品を開発します。 広告をつくります。 ホームページを更新します。 SNSで情報を発信します。 しかし、ブランドを育てているのは、企業だけではありません。 生活者です。 商品を使い、家族に勧め、口コミを書き、毎日の暮らしの中でブランドへ意味を与えています。 ブランドとは、企業が完成させるものではありません。 生活者との関係の中で育っていくものです。 私たちは答えを教えてもらっている HERSTORYでは35年以上、女性たちへ話を聞き続けています。 アンケート インタビュー 座談会 自由回答 私たちは、企業が正しい答えを持っているとは思っていません。 むしろ、答えは生活者の暮らしの中にあります。 だから、私たちは教える前に、まず聞きます。 企業が商品を説明する前に、生活者が何を感じているのかを聞きます。 私は、この順番がとても大切だと思っています。 対話が、新しい市場をつくる 暮らしは毎日変わります。 物価が変わる。 働き方が変わる。 家族が変わる。 価値観が変わる。 すると、昨日まで選ばれていた理由も変わります。 企業が一方的に情報を発信するだけでは、その変化には気づけません。 だから、生活者との対話が必要になります。 対話とは、意見を聞くことではありません。暮らしを理解することです。 私は、新しい市場は、この対話から生まれると思っています。 AI時代だからこそ、対話の価値は高まる AIは、情報を整理できます。 仮説もつくれます。 企業のブランドも説明できます。 しかし、今日の暮らしを生きているのは、生活者です。 だから、暮らしの小さな変化は、対話の中からしか見えてきません。 AIが進化するほど、生活者との対話は、ますます重要になります。 私は、AIは対話の代わりにはならないと思っています。 AIは、対話の価値を、より高めてくれる存在です。 HERSTORYが続けてきたこと 35年以上、私たちが続けてきたことは、とてもシンプルです。 女性の暮らしを見続けること。 生活者の声を聞き続けること。 そして、企業へ届けること。 商品ではなく、暮らしを見る。 年代ではなく、生活を見る。 数字だけではなく、言葉を読む。 この積み重ねが、HERSTORYの仕事でした。 AI時代になって、私はその価値を、以前より強く感じています。 ブランドは、共につくるもの 私は、ブランドとは、企業がつくるものではなく、企業と生活者が一緒に育てていくものだと思っています。 企業は、約束をする。 生活者は、その約束を暮らしの中で確かめる。 その繰り返しが、信頼になります。 信頼が積み重なることで、ブランドになります。 だからブランドとは、一方通行ではありません。 対話です。 おわりに この連載では、AI時代のブランドについて考えてきました。 しかし、最後まで変わらなかったものがあります。 それは、ブランドの中心には、いつも生活者がいるということです。 企業が伝える。 AIが整理する。 生活者が意味を与える。 その循環が、ブランドを育てます。 私たちHERSTORYは、これからも、生活者との対話を続けながら、企業とともにブランドを育てていきたいと思っています。 次回は、この連載の最終回です。 「HERSTORYが考えるAI時代の生活者理解」として、ここまでの10回を振り返りながら、 私たちがこれから目指すブランドマネジメントについて、改めてお伝えしたいと思います。 HERSTORY NOTE ブランドは企業だけで育てるものではない。 生活者との対話が、ブランドを成長させる。 対話とは、意見を集めることではなく、暮らしを理解することである。 AI時代だからこそ、生活者との対話の価値は高まる。 HERSTORYは、暮らしとの対話を通して、企業と生活者をつなぐ会社である。 筆者プロフィール 日野佳恵子 女性インサイト総研 株式会社ハー・ストーリィ 代表取締役社長一般社団法人女性のあしたアカデミー 代表理事 島根出身。1990年創業。女性の購買行動とライフコースの関連がマーケティングに影響を及ぼすことに着眼し、女性インサイト理論を独自開発。学習院大学、成城大学、大阪公立大学の専門教授らと「男女の消費行動研究」を発表している。クライアントは生活消費財を中心にメーカーから小売まで幅広く、「女性顧客起点の専門家」として多数の企業のアドバイザーを行う。 <代表的な受賞ほか> 経済紙Forbes Japan「日本の社長100人」、日経WEBCOMPANYが選ぶ「21世紀 時代のキーパーソン51人」、日経ウーマン・ウーマン・オブ・ザ・イヤー2003リーダー部門第9位、2013世界女性リーダースティビーアワード銀賞、日本の残したい企業100社、2021Forbes Woman Award300人未満全国第2位など個人、企業活動と両面で広く評価されている。 下記よりメールマガジンの登録をいただくと、最新記事の更新をお知らせいたします。ご登録のうえ、配信を楽しみにお待ちください。 <連載ページ> 【第1回】女性は企業の言葉をどう翻訳しているのか 【第2回】AIはブランドをどう解釈しているのか 【第3回】女性は企業の言葉をどう翻訳しているのか 【第4回】ブランドは「伝えたこと」ではなく、「理解されたこと」で決まる 【第5回】AIが進化するほど、生活者インサイトの価値は高まる 【第6回】暮らしを見なければ、ブランドは理解できない 【第7回】AIに選ばれる企業より、人に理解される企業へ 【第8回】一次データがブランド資産になる時代 【第9回】ブランドは、生活者との対話で育つ 【第10回】HERSTORYが考えるAI時代の生活者理解

  • 【第8回】一次データがブランド資産になる時代

    AI時代のブランドマネジメント ~AI時代になるほど生活者理解が重要となる~ 先日、ある企業の経営者から、こんな相談を受けました。 「これからAI時代になると、企業は何を発信していけばよいのでしょうか。」 ホームページでしょうか。 SNSでしょうか。 動画でしょうか。 私は少し考えてから、こうお答えしました。 「これから企業が最も発信すべきものは、広告ではありません。」 まだ世の中にない事実です。 それが、一次データです。 AIは新しい事実をつくることはできない AIは本当に優秀です。 膨大な情報を整理できます。 比較できます。 要約できます。 仮説もつくれます。 しかし、AI自身が、新しい事実を発見することはできません。 例えば、 「今年、女性の暮らしは何が変わったのか。」 「今、生活者は何に困っているのか。」 「これから市場はどう変わるのか。」 こうした情報は、誰かが生活者へ聞かなければ、世の中には存在しません。 つまり、AIが学ぶ情報は、誰かが最初に社会へ発信した情報なのです。 一次データは未来を映している HERSTORYでは、毎月、女性たちへ調査を続けています。 その中でいつも感じることがあります。 暮らしは、社会より先に変わります。 ニュースになる前に、暮らしが変わります。 市場が動く前に、買い方が変わります。 企業が気付く前に、女性たちの毎日の選択が変わっています。 私たちは、その小さな変化を見ています。 だから一次データとは、未来を映している情報なのです。 AI時代は「誰が言ったか」が重要になる これまでインターネットでは、情報量が価値でした。 しかしAI時代になると、AIは、その情報を誰が発信したのかも見ています。 どんな方法で調査したのか。 根拠はあるのか。 社会的な信頼性はあるのか。 つまり、情報そのものだけではなく、情報の信頼性がブランドになります。私は、ここがAI時代の最も大きな変化だと思っています。 ブランドは「意味」を発信する ブランドというと、広告を思い浮かべる方が多いかもしれません。 しかし、私はこれからのブランドは、広告だけでは育たないと思っています。 企業が、社会へ新しい気づきを届ける。新しい基準を提案する。新しい暮らしを言葉にする。 その積み重ねが、ブランドになります。 例えばHERSTORYでは、 「冷凍庫140L時代」という新しい基準を社会へ提案しました。 「女性の約8割が生活不安を感じている。」という事実を発信しました。 「子どもの目の健康」というテーマを社会へ届けました。 これらは、商品を宣伝したのではありません。 暮らしの変化を社会へ伝えたのです。 その結果、企業そのものへの信頼が積み重なっていきました。 HERSTORYが考えるPR 私は、これからのPRは、商品の宣伝ではないと思っています。 社会へ、新しい意味を提案することです。 生活者に聞き、暮らしの変化を見つけ、社会へ届ける。 その積み重ねが、企業のブランドになります。 そして、AIはその事実を学び、企業を理解していきます。 だから私は、PRとは、広告活動ではなく、ブランド資産を積み上げる活動だと考えています。 一次データは企業だけの資産ではない 生活者から得られた一次データは、企業だけのものではありません。 社会に共有されることで、新しい価値になります。 例えば、「女性の約8割が生活不安を感じている。」という事実は、一企業だけの課題ではありません。 行政にも、教育にも、地域にも、商品開発にも関係するテーマです。 だから、一次データは、企業の資産であると同時に、社会の資産でもあります。 私は、ここに企業が社会と共にブランドを育てる新しい役割があると考えています。 おわりに AI時代になるほど、企業が自ら生み出した一次情報の価値は高まっていきます。 AIは、その情報を学び、社会は、その情報を共有し、生活者は、その情報によって新しい選択をします。 これから企業に求められるのは、情報を集めることではありません。社会に新しい意味を生み出すことです。 それが、これからのブランド資産になると考えています。 次回は、「ブランドは生活者との対話で育つ」というテーマで、HERSTORYが35年以上続けてきた「対話」の価値についてお話ししたいと思います。 HERSTORY NOTE AIは新しい事実を生み出すことはできない。 一次データは未来を映す情報である。 AI時代は、情報量よりも「誰が発信した情報か」が重要になる。 PRとは商品の宣伝ではなく、社会へ新しい意味を提案する活動である。 一次データは企業資産であると同時に、社会資産でもある。 筆者プロフィール 日野佳恵子 女性インサイト総研 株式会社ハー・ストーリィ 代表取締役社長一般社団法人女性のあしたアカデミー 代表理事 島根出身。1990年創業。女性の購買行動とライフコースの関連がマーケティングに影響を及ぼすことに着眼し、女性インサイト理論を独自開発。学習院大学、成城大学、大阪公立大学の専門教授らと「男女の消費行動研究」を発表している。クライアントは生活消費財を中心にメーカーから小売まで幅広く、「女性顧客起点の専門家」として多数の企業のアドバイザーを行う。 <代表的な受賞ほか> 経済紙Forbes Japan「日本の社長100人」、日経WEBCOMPANYが選ぶ「21世紀 時代のキーパーソン51人」、日経ウーマン・ウーマン・オブ・ザ・イヤー2003リーダー部門第9位、2013世界女性リーダースティビーアワード銀賞、日本の残したい企業100社、2021Forbes Woman Award300人未満全国第2位など個人、企業活動と両面で広く評価されている。 下記よりメールマガジンの登録をいただくと、最新記事の更新をお知らせいたします。ご登録のうえ、配信を楽しみにお待ちください。 <連載ページ> 【第1回】女性は企業の言葉をどう翻訳しているのか 【第2回】AIはブランドをどう解釈しているのか 【第3回】女性は企業の言葉をどう翻訳しているのか 【第4回】ブランドは「伝えたこと」ではなく、「理解されたこと」で決まる 【第5回】AIが進化するほど、生活者インサイトの価値は高まる 【第6回】暮らしを見なければ、ブランドは理解できない 【第7回】AIに選ばれる企業より、人に理解される企業へ 【第8回】一次データがブランド資産になる時代 【第9回】ブランドは、生活者との対話で育つ 【第10回】HERSTORYが考えるAI時代の生活者理解

  • 【第7回】AIに選ばれる企業より、人に理解される企業へ

    AI時代のブランドマネジメント ~AI時代になるほど生活者理解が重要となる~ ここ一年ほどで、 「AI対策」という言葉を耳にする機会が急激に増えました。 AEO、LLMO、GEO、AI検索最適化。 企業の方からも、「まず何から始めればよいのでしょうか。」という相談をいただくことが増えています。 しかし、そのたびに私は、一つだけお伝えしていることがあります。 AI対策は目的ではありません。 目的は、生活者に理解されることです。 AIは新しいお客様ではない AIという言葉を聞くと、 AIに評価される。 AIに選ばれる。 AIに最適化する。 そんな話になりがちです。 しかし私は、AIは新しいお客様ではないと思っています。 AIは、生活者の代わりに情報を整理する存在です。 生活者が安心して選べるように、情報を集め、比較し、説明してくれる存在です。 だから、企業が向き合う相手は、今も昔も変わりません。生活者です。 AIが紹介したくなる企業とは では、AIはどんな企業を紹介するのでしょうか。 私は毎日のようにAIへ企業について質問しています。 その中で感じることがあります。AIは、広告の上手な会社を紹介しているのではありません。 ホームページが派手な会社でもありません。 AIが説明しやすい会社です。 つまり、誰のために存在し、どんな価値を届け、何を約束している会社なのかが、一貫している企業です。 企業の言葉が揃っている会社ほど、AIも説明しやすくなります。 AI対策より先にやるべきこと 私は、企業が最初に取り組むべきことは、新しいツールを導入することではないと思っています。 まず、私たちは何者なのか。誰のための会社なのか。どんな暮らしを支えたいのか。 その言葉を、社内で一致させることです。 ホームページ 会社案内 営業資料 採用ページ SNS プレスリリース すべてが、同じブランドを語っているでしょうか。 AIは、企業全体を一つのブランドとして理解します。 だから企業も、一つのブランドとして発信しなければなりません。 情報量より、信頼される情報 これまでインターネットでは、情報量が多いことが強みでした。 しかしAI時代になると、もう一つ重要なものがあります。 それは、「信頼できる情報かどうか」ということです。 誰が調べたのか。 どのような根拠があるのか。 社会との接点があるのか。 第三者の評価があるのか。 AIは、こうした情報全体から、企業を理解していきます。 だからこれから企業が積み重ねるべきものは、広告より、信頼される情報資産です。 HERSTORYが考えるAI時代のブランド 私たちは35年以上、女性の暮らしを見続けてきました。 ブランドは、広告だけでは育ちません。商品だけでも育ちません。 生活者が、「この会社は私たちの暮らしを理解している。」 そう感じた瞬間から、ブランドは育ち始めます。 AI時代になっても、この本質は変わらないと思っています。 むしろ、情報があふれる時代だからこそ、企業の姿勢や考え方が、これまで以上に問われるようになっています。 AI時代に企業が積み重ねるもの 私は、AI時代のブランドとは、検索順位ではないと思っています。 企業が積み重ねてきた、一つひとつの言葉です。 生活者への約束。 社会への姿勢。 暮らしへの理解。 その積み重ねが、AIにも、生活者にも、ブランドとして理解されます。 AI対策とは、特別な技術ではありません。 ブランドの原点に戻ることなのです。 おわりに 企業が目指すべきなのは、AIに評価されることではありません。 生活者に、「この会社は私のことを理解している。」そう思ってもらうことです。 その結果として、AIにも理解される。 私は、この順番がこれからますます重要になると思っています。 次回は、「一次データがブランド資産になる時代」について考えてみたいと思います。 AIが答えを整理する時代だからこそ、企業自身が持つ一次情報の価値は、これまで以上に高まっていきます。 HERSTORY NOTE AI対策は目的ではない。生活者に理解されることが目的である。 AIは企業全体を一つのブランドとして解釈している。 AIが説明しやすい企業とは、一貫したブランドの意味を持つ企業である。 AI時代に企業が積み重ねるべきものは、広告ではなく信頼される情報資産である。 ブランドとは、「この会社は私たちの暮らしを理解している」と生活者に感じてもらうことで育つ。 筆者プロフィール 日野佳恵子 女性インサイト総研 株式会社ハー・ストーリィ 代表取締役社長一般社団法人女性のあしたアカデミー 代表理事 島根出身。1990年創業。女性の購買行動とライフコースの関連がマーケティングに影響を及ぼすことに着眼し、女性インサイト理論を独自開発。学習院大学、成城大学、大阪公立大学の専門教授らと「男女の消費行動研究」を発表している。クライアントは生活消費財を中心にメーカーから小売まで幅広く、「女性顧客起点の専門家」として多数の企業のアドバイザーを行う。 <代表的な受賞ほか> 経済紙Forbes Japan「日本の社長100人」、日経WEBCOMPANYが選ぶ「21世紀 時代のキーパーソン51人」、日経ウーマン・ウーマン・オブ・ザ・イヤー2003リーダー部門第9位、2013世界女性リーダースティビーアワード銀賞、日本の残したい企業100社、2021Forbes Woman Award300人未満全国第2位など個人、企業活動と両面で広く評価されている。 下記よりメールマガジンの登録をいただくと、最新記事の更新をお知らせいたします。ご登録のうえ、配信を楽しみにお待ちください。 <連載ページ> 【第1回】女性は企業の言葉をどう翻訳しているのか 【第2回】AIはブランドをどう解釈しているのか 【第3回】女性は企業の言葉をどう翻訳しているのか 【第4回】ブランドは「伝えたこと」ではなく、「理解されたこと」で決まる 【第5回】AIが進化するほど、生活者インサイトの価値は高まる 【第6回】暮らしを見なければ、ブランドは理解できない 【第7回】AIに選ばれる企業より、人に理解される企業へ 【第8回】一次データがブランド資産になる時代 【第9回】ブランドは、生活者との対話で育つ 【第10回】HERSTORYが考えるAI時代の生活者理解

  • 【第6回】暮らしを見なければ、ブランドは理解できない

    AI時代のブランドマネジメント ~AI時代になるほど生活者理解が重要となる~ ある企業の担当者から、こんな質問を受けたことがあります。 「40代女性向けの商品を開発したいのですが、40代女性とはどんな人なのでしょうか。」 私は少し考えてから、こう答えました。 「40代女性は、一人ではありません。」 同じ40代でも、 ひとり暮らしの人 夫婦二人で暮らす人 小学生の子どもを育てている人 高校生の子どもがいる人 親の介護が始まった人 毎日の暮らしは、まったく違います。 だから私は、「40代女性向け」という言葉だけでは、本当の生活者は見えてこないと思っています。 人は年代ではなく、暮らしで選んでいる マーケティングでは、 20代女性 30代女性 40代女性 という分類がよく使われます。 もちろん、それも一つの見方です。 しかしHERSTORYが35年以上女性の暮らしを見続けてきて分かったことがあります。 人は、年代で商品を選んでいるのではありません。暮らしで商品を選んでいます。 私は、この違いがとても大きいと思っています。 同じ商品でも、意味は変わる 例えば冷蔵庫を考えてみます。 ひとり暮らしなら、コンパクトで十分かもしれません。 子育て中なら、まとめ買いできる冷凍室が必要になります。 夫婦二人なら、食材を無駄なく保存できることが大切になります。 介護中なら、買い物へ行く回数を減らせることが価値になります。 同じ冷蔵庫でも、選んでいる理由はまったく違います。 つまり、生活者は冷蔵庫を買っているようで、本当は自分の暮らしに合った生活を選んでいるのです。 ブランドの意味も暮らしで変わる ブランドも同じです。 若い頃には、「デザインが好き」だったブランドが、 子育て中には、「安心して使えるブランド」になります。 子どもが独立すると、「もう一度、自分らしくいられるブランド」へ変わることがあります。 ブランドは変わっていません。変わったのは、生活者の暮らしです。だからブランドの意味も変わるのです。 HERSTORYが見つけてきたもの HERSTORYは35年以上、女性を調査してきた会社ではありません。 女性を通して、暮らしを研究してきた会社です。 仕事、家族、子育て、介護、健康、地域、人との関係。 こうした暮らし全体が、商品を選ぶ理由を変えていきます。 だから私たちは、商品だけを聞きません。暮らしを聞きます。 一日の過ごし方、休日の時間、家族との関係、仕事の状態。 その背景が分かって初めて、「なぜ、この商品が選ばれたのか。」を理解できるからです。 市場は、暮らしから変わる 私は35年以上、女性たちの暮らしを見続けてきました。 振り返ると、市場が変わる前には、必ず暮らしが変わっていました。 物価が上がる前に、まとめ買いが増えました。 家族構成が変わる前に、ひとりで快適に暮らす工夫が増えました。 社会が変わる前に、女性たちの毎日の選択が変わっていました。 だから私は、市場は社会で変わるのではありません。 暮らしから変わる。 この考え方を、これからも大切にしていきたいと思っています。 AIは暮らしを推測できても、観察できない AIは、企業情報を整理できます。市場を分析できます。生活を推測することもできます。 しかし、今日、どんな気持ちで帰宅したのか。夕食を誰と食べたのか。子どもとどんな会話をしたのか。そんな暮らしの積み重ねまでは分かりません。 暮らしとは、数字ではありません。毎日の小さな選択の積み重ねです。 だから私は、AI時代だからこそ、暮らしを観察することの価値は、ますます高くなると思っています。 おわりに 企業は市場を見ています。私たちは暮らしを見ています。 市場は、暮らしの結果です。暮らしが変われば、市場も変わります。 だから私たちは、これからも、生活者の小さな変化を見続けていきます。 そこに次の市場のヒントがあると考えているからです。 次回は、「AIに選ばれる企業より、人に理解される企業へ」というテーマで、AI時代に企業が本当に目指すべきブランドについて考えてみたいと思います。 HERSTORY NOTE 人は年代ではなく、暮らしによって商品を選んでいる。 ブランドの意味は、生活者の暮らしとともに変化する。 HERSTORYは女性を研究している会社ではない。女性を通して暮らしを研究している会社である。 市場は社会で変わるのではない。暮らしから変わる。 AIは生活を推測できる。しかし、暮らしを観察できるのは生活者だけである。 筆者プロフィール 日野佳恵子 女性インサイト総研 株式会社ハー・ストーリィ 代表取締役社長一般社団法人女性のあしたアカデミー 代表理事 島根出身。1990年創業。女性の購買行動とライフコースの関連がマーケティングに影響を及ぼすことに着眼し、女性インサイト理論を独自開発。学習院大学、成城大学、大阪公立大学の専門教授らと「男女の消費行動研究」を発表している。クライアントは生活消費財を中心にメーカーから小売まで幅広く、「女性顧客起点の専門家」として多数の企業のアドバイザーを行う。 <代表的な受賞ほか> 経済紙Forbes Japan「日本の社長100人」、日経WEBCOMPANYが選ぶ「21世紀 時代のキーパーソン51人」、日経ウーマン・ウーマン・オブ・ザ・イヤー2003リーダー部門第9位、2013世界女性リーダースティビーアワード銀賞、日本の残したい企業100社、2021Forbes Woman Award300人未満全国第2位など個人、企業活動と両面で広く評価されている。 下記よりメールマガジンの登録をいただくと、最新記事の更新をお知らせいたします。ご登録のうえ、配信を楽しみにお待ちください。 <連載ページ> 【第1回】女性は企業の言葉をどう翻訳しているのか 【第2回】AIはブランドをどう解釈しているのか 【第3回】女性は企業の言葉をどう翻訳しているのか 【第4回】ブランドは「伝えたこと」ではなく、「理解されたこと」で決まる 【第5回】AIが進化するほど、生活者インサイトの価値は高まる 【第6回】暮らしを見なければ、ブランドは理解できない 【第7回】AIに選ばれる企業より、人に理解される企業へ 【第8回】一次データがブランド資産になる時代 【第9回】ブランドは、生活者との対話で育つ 【第10回】HERSTORYが考えるAI時代の生活者理解

  • 【第5回】AIが進化するほど、生活者インサイトの価値は高まる

    AI時代のブランドマネジメント ~AI時代になるほど生活者理解が重要となる~ 最近、講演やセミナーのあとで、よくこんな質問を受けます。 「AIがここまで進化したら、生活者調査は必要なくなるのでしょうか。」 確かに、そう思われるのも無理はありません。 生成AIは膨大な情報を読み込み、市場を分析し、競合を比較し、新しい企画まで提案してくれます。 私自身も毎日のようにAIを使い、その能力に驚かされています。 しかし、その一方で、35年以上女性の暮らしを見続けてきた私は、まったく逆のことを感じています。 AIが進化するほど、生活者インサイトの価値は高まる。 そう確信しています。 AIは「答え」を探す AIは本当に優秀です。 市場を分析できます。 競合を比較できます。 過去の成功事例を整理できます。 仮説も立てられます。 つまり、「今ある情報」から、もっとも可能性の高い答えを導き出すことができます。 これは企業にとって大きな武器です。 しかし、AIは「まだない問い」を知らない 一方で、生活者の暮らしはどうでしょう。 昨日まで感じていなかった違和感。 まだ言葉になっていない不便。 誰にも話していない迷い。 「こんな商品があればいいのに。」 そんな小さな変化は、まだインターネットには存在していません。 つまり、AIは知らないのです。 HERSTORYが見つけてきたもの 私たちは35年以上、女性へのアンケートとインタビューを続けてきました。 その中で見つけてきたものは、答えではありません。 問いです。 例えば、「時短したい。」という声があったとします。 AIは、「調理時間を短くする商品」という答えを考えるでしょう。 しかし、生活者に話を聞き続けると、違う言葉が聞こえてきます。 「子どもとゆっくり夕食を食べたい。」 「家族にイライラしたくない。」 「一日を笑顔で終えたい。」 つまり、本当に欲しかったのは、時短ではありません。家族との時間でした。 ここで初めて、企業がつくるべき商品の意味が変わります。 インサイトとは答えではない 私は、インサイトとは分析結果ではないと思っています。 生活者自身も気づいていなかった「本当はこうしたかった」という気持ちです。 数字だけでは見えません。 検索でも見つかりません。 AIもまだ知りません。 だからインサイトとは、まだ世の中に存在していない一次情報なのです。 AIと生活者は競争相手ではない ここは誤解してほしくありません。 私は、AIと生活者を比較したいわけではありません。 むしろ、これからの商品開発は、AIと生活者が一緒になる時代だと思っています。 まずAIが、市場を分析する。競合を見る。仮説を立てる。 そして、その仮説を生活者に聞く。 暮らしの中で確かめる。 私は、これからのマーケティングは、この順番になると思っています。 つまり、AIか生活者か、ではありません。AIと生活者です。 HERSTORYの役割 HERSTORYは、35年以上、女性の暮らしを見続けてきました。 私たちは、アンケート会社ではありません。インタビュー会社でもありません。 私たちの役割は、AIが立てた仮説を、暮らしの中で確かめることです。 そして、まだ誰も気づいていない新しい問いを見つけることです。 市場は、答えから生まれません。問いから生まれます。 私たちは、その問いを見つける仕事を続けてきました。 AI時代に企業が持つべき資産 AIは、公開されている情報を学習します。 だからこそ、企業には、まだ世の中に存在しない情報が必要になります。 生活者の声。 暮らしの変化。 まだ言葉になっていない願い。 これらは、他社も持っていない。AIも持っていない。企業だけの資産になります。 私は、AI時代とは、「情報を集める競争」ではなく、「まだ存在しない情報を生み出す競争」 になると思っています。 おわりに AIは、答えを導き出す力を持っています。 しかし、その答えの出発点になる問いは、暮らしの中からしか生まれません。 だから私は、AI時代だからこそ、生活者インサイトは、これまで以上に価値を持つと考えています。 次回は、「暮らしを見なければ、ブランドは理解できない」というテーマで、HERSTORYが35年以上研究してきた「暮らし」という視点について考えてみたいと思います。 HERSTORY NOTE AIは公開されている情報から答えを導き出すことに優れている。 インサイトとは、まだ言葉になっていない生活者の問いである。 AIは仮説をつくることができる。しかし、その仮説を確かめられるのは生活者だけである。 AIか生活者か、ではない。AIと生活者である。 HERSTORYは、女性インサイトを通して、まだ世の中に存在しない問いを見つける会社である。 筆者プロフィール 日野佳恵子 女性インサイト総研 株式会社ハー・ストーリィ 代表取締役社長一般社団法人女性のあしたアカデミー 代表理事 島根出身。1990年創業。女性の購買行動とライフコースの関連がマーケティングに影響を及ぼすことに着眼し、女性インサイト理論を独自開発。学習院大学、成城大学、大阪公立大学の専門教授らと「男女の消費行動研究」を発表している。クライアントは生活消費財を中心にメーカーから小売まで幅広く、「女性顧客起点の専門家」として多数の企業のアドバイザーを行う。 <代表的な受賞ほか> 経済紙Forbes Japan「日本の社長100人」、日経WEBCOMPANYが選ぶ「21世紀 時代のキーパーソン51人」、日経ウーマン・ウーマン・オブ・ザ・イヤー2003リーダー部門第9位、2013世界女性リーダースティビーアワード銀賞、日本の残したい企業100社、2021Forbes Woman Award300人未満全国第2位など個人、企業活動と両面で広く評価されている。 下記よりメールマガジンの登録をいただくと、最新記事の更新をお知らせいたします。ご登録のうえ、配信を楽しみにお待ちください。 <連載ページ> 【第1回】女性は企業の言葉をどう翻訳しているのか 【第2回】AIはブランドをどう解釈しているのか 【第3回】女性は企業の言葉をどう翻訳しているのか 【第4回】ブランドは「伝えたこと」ではなく、「理解されたこと」で決まる 【第5回】AIが進化するほど、生活者インサイトの価値は高まる 【第6回】暮らしを見なければ、ブランドは理解できない 【第7回】AIに選ばれる企業より、人に理解される企業へ 【第8回】一次データがブランド資産になる時代 【第9回】ブランドは、生活者との対話で育つ 【第10回】HERSTORYが考えるAI時代の生活者理解

  • 【第4回】ブランドは「伝えたこと」ではなく、「理解されたこと」で決まる

    AI時代のブランドマネジメント ~AI時代になるほど生活者理解が重要となる~ ある企業のブランド担当者と話をしていたとき、私はこんな質問をしました。 「御社のブランドを、お客様は一言でどう説明していると思いますか。」 少し考えたあと、その方はこう答えました。 「安心感のある会社、でしょうか。」 そこで実際に生活者へ聞いてみると、返ってきた答えは違いました。 「品質は良さそう。」 「価格が高そう。」 「私には少し敷居が高い。」 企業が思い描いていたブランドと、生活者が理解していたブランドは、少しずつずれていたのです。 私は、このような場面を何度も見てきました。 ブランドは企業のものではない ブランドというと、企業がつくるものだと思われがちです。 しかし私は、ブランドとは、企業の所有物ではないと思っています。 ブランドは、生活者の頭の中にあります。 生活者が 「この会社は私に合っている。」 「この会社は信頼できる。」 そう思った瞬間に、ブランドが生まれます。 だからブランドは、企業が決めるものではありません。 生活者が理解した結果なのです。 「知っている」と「理解している」は違う 企業は、認知度を測ります。 ブランド認知 商品認知 広告認知 しかし、認知と理解は違います。 企業名を知っている。 CMを見たことがある。 商品名を聞いたことがある。 これは認知です。 一方で、 その会社は何を大切にしているのか。 自分にどんな価値を届けてくれる会社なのか。 ここまで理解されて初めて、ブランドになります。 私は、これから企業が測るべきものは、認知ではなく、ブランド理解ではないかと思っています。 女性はブランドではなく、「自分との関係」を見ている HERSTORYでは35年以上、女性へのインタビューを続けてきました。 その中で気づいたことがあります。 企業は商品の魅力を語ります。 女性は、「それは私の暮らしにどう関係するのですか。」を考えています。 企業は性能を説明します。 女性は、「それで私は少しラクになりますか。」と考えています。 ブランドとは、企業が語る物語ではありません。 生活者が、「これは私の話だ。」と思える物語です。 AI時代は「ブランド理解」を確認する時代 AIは、企業の情報を整理します。 生活者は、暮らしの中で意味をつくります。 だから企業には、もう一つ必要な仕事があります。 それは、ブランドがどう理解されているかを確認すること。 企業が伝えたいブランド。 AIが解釈するブランド。 生活者が理解するブランド。 この三つは、本当に一致しているでしょうか。 もし一致していなければ、どこかでブランドの意味が変わっています。 私は、これからのブランド戦略とは、広告をつくることではなく、ブランド理解を確認し続けることだと思っています。 HERSTORYが見てきたこと 私たちは35年以上、女性の暮らしを見続けてきました。 商品への不満より、企業への誤解のほうが多いことがあります。 企業は、「ここが強み」と思っている。 しかし生活者は、まったく違うところに価値を感じている。 逆に、企業が当たり前だと思っていたことが、生活者には一番魅力だった。 そんな場面を何度も見てきました。 だから私たちは、商品を評価する前に、ブランドがどう理解されているかを確認します。 そこから、本当のブランドづくりが始まると考えています。 おわりに AI時代になって、ブランドはますます「意味」の時代になりました。 企業が伝えたい意味。 AIが解釈する意味。 生活者が理解する意味。 この三つが重なったとき、ブランドは初めて強くなります。 だから、ブランド戦略とは、「伝える仕事」ではありません。 理解を設計し、理解を確認し続ける仕事です。 次回は、「AIが進化するほど、生活者インサイトの価値は高まる」という、一見すると矛盾しているように見えるテーマについて考えてみたいと思います。 HERSTORY NOTE ブランドは企業が伝えたことで決まるのではない。 ブランドは生活者が理解したことで形成される。 認知と理解は異なる。 AI時代に企業が確認すべきなのは「ブランド理解」である。 ブランドの意味は、企業だけでは確認できない。女性インサイトを通して初めて、暮らしとの接点が見えてくる。 筆者プロフィール 日野佳恵子 女性インサイト総研 株式会社ハー・ストーリィ 代表取締役社長一般社団法人女性のあしたアカデミー 代表理事 島根出身。1990年創業。女性の購買行動とライフコースの関連がマーケティングに影響を及ぼすことに着眼し、女性インサイト理論を独自開発。学習院大学、成城大学、大阪公立大学の専門教授らと「男女の消費行動研究」を発表している。クライアントは生活消費財を中心にメーカーから小売まで幅広く、「女性顧客起点の専門家」として多数の企業のアドバイザーを行う。 <代表的な受賞ほか> 経済紙Forbes Japan「日本の社長100人」、日経WEBCOMPANYが選ぶ「21世紀 時代のキーパーソン51人」、日経ウーマン・ウーマン・オブ・ザ・イヤー2003リーダー部門第9位、2013世界女性リーダースティビーアワード銀賞、日本の残したい企業100社、2021Forbes Woman Award300人未満全国第2位など個人、企業活動と両面で広く評価されている。 下記よりメールマガジンの登録をいただくと、最新記事の更新をお知らせいたします。ご登録のうえ、配信を楽しみにお待ちください。 <連載ページ> 【第1回】女性は企業の言葉をどう翻訳しているのか 【第2回】AIはブランドをどう解釈しているのか 【第3回】女性は企業の言葉をどう翻訳しているのか 【第4回】ブランドは「伝えたこと」ではなく、「理解されたこと」で決まる 【第5回】AIが進化するほど、生活者インサイトの価値は高まる 【第6回】暮らしを見なければ、ブランドは理解できない 【第7回】AIに選ばれる企業より、人に理解される企業へ 【第8回】一次データがブランド資産になる時代 【第9回】ブランドは、生活者との対話で育つ 【第10回】HERSTORYが考えるAI時代の生活者理解

  • 【第3回】女性は企業の言葉をどう翻訳しているのか

    AI時代のブランドマネジメント~AI時代になるほど生活者理解が重要となる~ 先日、ある企業の担当者から、こんな相談を受けました。 「私たちは"安心"を伝えているつもりなのですが、なかなか伝わりません。」 ホームページにも書いてある 広告でも伝えている 営業も説明している それでも生活者に話を聞くと、「価格が高そう。」「私には関係なさそう。」 そんな印象を持たれていました。 企業は「安心」を伝えていたのに、生活者には違う言葉として届いていたのです。 私は、このような場面を35年以上見続けてきました。 女性は企業の言葉を、そのまま受け取らない 企業は商品を説明するとき、 高品質 安心 時短 機能性 サステナブル という言葉を使います。 しかし女性は、その言葉を一度、自分の暮らしの中へ持ち帰ります。 そして、「私にとって、それはどういう意味なのだろう。」と考えます。 ここで企業の言葉は、暮らしの言葉へ翻訳されます。 「時短」は時間ではない 例えば、企業は「時短できます。」と言います。 すると企業は、 料理時間が短くなる 洗濯時間が短くなる 掃除時間が短くなる そう考えています。 しかし女性は違います。 子育て中なら、子どもと話す時間が増える。 共働きなら、夜、自分の時間が少し戻ってくる。 介護中なら、気持ちに余裕ができる。 つまり女性は、時間を買っているのではありません。 時間によって生まれる暮らしを買っています。 同じ40代でも、まったく違う HERSTORYでは35年以上、女性への調査とインタビューを続けてきました。 その中で分かったことがあります。同じ40代女性でも、まったく違うブランドを見ています。 ひとり暮らし 夫婦二人暮らし 子育て中 親の介護中 同じ年代でも、暮らしが違えば、ブランドの意味は変わります。 年代ではなく、暮らしが、ブランドを翻訳しているのです。 女性は商品ではなく、暮らしを選んでいる 私たちは何万件もの自由回答を読み、数え切れないほどインタビューをしてきました。 そこで繰り返し聞いた言葉があります。 「主人が喜ぶから。」 「子どもが安心して食べられるから。」 「朝の気持ちが少しラクになるから。」 「疲れて帰っても笑顔でいられるから。」 誰も、商品の性能だけを語りません。AIはここまでは分からない 女性が選んでいるのは、商品そのものではありません。 その商品によって変わる暮らしです。 私は、この一文こそHERSTORYがたどり着いた答えだと思っています。 AIはここまでは分からない AIは、公開されている情報を整理できます。 企業情報も理解できます。口コミも集められます。 しかし、暮らしの中で、「なぜその商品を選んだのか。」という意味までは分かりません。 仕事を終えて帰宅し、夕食をつくり、子どもを寝かせ、ようやく一人になった夜。 そのとき女性が、「少しだけ自分を大切にしたい。」と思って化粧品を選ぶ。 そんな暮らしの意味は、データだけでは見えてきません。 だから私は、AI時代だからこそ生活者へ直接聞く価値はこれまで以上に高まると思っています。 HERSTORYが見てきたこと HERSTORYは、女性を調査してきた会社ではありません。 女性を通して、暮らしを見てきた会社です。 企業の言葉と、生活者の言葉。その間には、いつも少しズレがあります。 私たちは36年間、そのズレを見つけ、 企業の言葉を、暮らしの言葉へ翻訳してきました。 今になって振り返ると、HERSTORYが取り組んできた仕事とは、 まさにブランドの意味を翻訳する仕事だったのだと思います。 おわりに 企業は「伝えた。」と思っています。 しかし、生活者は「そうは受け取っていない。」ということが少なくありません。 ブランドとは、企業が語る物語ではなく、生活者が「これは私のことだ。」と思えた瞬間に生まれるものです。 次回は、「ブランドは『伝えたこと』ではなく、『理解されたこと』で決まる」というテーマで、ブランドの本当の姿について考えてみたいと思います。 HERSTORY NOTE 女性は企業の言葉を、そのまま受け取ってはいない。 女性は暮らしの中でブランドの意味を翻訳している。 女性が選んでいるのは商品ではなく、その商品によって変わる暮らしである。 AIは情報を整理できる。しかし暮らしの意味までは理解できない。 HERSTORYは、女性を研究している会社ではない。女性を通して、暮らしを研究している会社である。 筆者プロフィール 日野佳恵子 女性インサイト総研 株式会社ハー・ストーリィ 代表取締役社長一般社団法人女性のあしたアカデミー 代表理事 島根出身。1990年創業。女性の購買行動とライフコースの関連がマーケティングに影響を及ぼすことに着眼し、女性インサイト理論を独自開発。学習院大学、成城大学、大阪公立大学の専門教授らと「男女の消費行動研究」を発表している。クライアントは生活消費財を中心にメーカーから小売まで幅広く、「女性顧客起点の専門家」として多数の企業のアドバイザーを行う。 <代表的な受賞ほか> 経済紙Forbes Japan「日本の社長100人」、日経WEBCOMPANYが選ぶ「21世紀 時代のキーパーソン51人」、日経ウーマン・ウーマン・オブ・ザ・イヤー2003リーダー部門第9位、2013世界女性リーダースティビーアワード銀賞、日本の残したい企業100社、2021Forbes Woman Award300人未満全国第2位など個人、企業活動と両面で広く評価されている。 下記よりメールマガジンの登録をいただくと、最新記事の更新をお知らせいたします。ご登録のうえ、配信を楽しみにお待ちください。 <連載ページ> 【第1回】女性は企業の言葉をどう翻訳しているのか 【第2回】AIはブランドをどう解釈しているのか 【第3回】女性は企業の言葉をどう翻訳しているのか 【第4回】ブランドは「伝えたこと」ではなく、「理解されたこと」で決まる 【第5回】AIが進化するほど、生活者インサイトの価値は高まる 【第6回】暮らしを見なければ、ブランドは理解できない 【第7回】AIに選ばれる企業より、人に理解される企業へ 【第8回】一次データがブランド資産になる時代 【第9回】ブランドは、生活者との対話で育つ 【第10回】HERSTORYが考えるAI時代の生活者理解

  • 【第1回】「検索される会社」から「正しく理解される会社」へ

    AI時代のブランドマネジメント~AI時代になるほど生活者理解が重要となる~ ある日の出来事 先日、仕事用のジャケットを探していて、私は検索サイトではなく、ChatGPTにこう質問しました。 「ビジネスでもカジュアルでも着られて、知性を感じるけれど個性的すぎないブランドを教えてください。」 以前なら、 「40代 レディース ジャケット」 「ビジネス カジュアル ブランド」 といったキーワードを考えながら検索していたと思います。 ところがAIは、商品名を並べるのではなく、まず私の好みや価値観を整理し、「あなたは華やかさよりも、造形性や世界観を大切にしているようですね。」と返してきました。 この瞬間、「検索」の時代とは何かが変わった、と感じました。 AIは商品ではなく企業を説明する 検索エンジンは、入力された言葉に近いページを探します。 一方、生成AIは違います。 ホームページ 商品ページ ニュース プレスリリース SNS 採用情報 ―― さまざまな情報を読み込み、「この会社は何者なのか。」という一つの企業像を組み立てて答えます。 つまりAIは、キーワードではなくブランドを説明しています。 ここに、これまでの検索対策との大きな違いがあります。 問われるのは検索対策ではない AI時代になると、「何と検索されるか」よりも、「自分たちは何者なのか」のほうが重要になります。 誰のために存在する会社なのか。 どんな暮らしを支えようとしているのか。 何を約束するブランドなのか。 この軸が定まっていなければ、 商品ページ ニュース プレスリリース SNS 採用情報 それぞれが違う会社を語り始めます。 人が理解しにくい企業は、AIにとっても理解しにくい企業です。 企業の言葉と生活者の言葉は違う しかし、もう一つ大切なことがあります。 企業が「上質」と言っても、生活者は「価格が高そう」と思うかもしれません。 企業が「革新的」と言えば、生活者は「難しそう」と感じるかもしれません。 企業が発した言葉は、そのまま届くわけではありません。 暮らしの中で意味が変わります。ここにブランドづくりの難しさがあります。 HERSTORYが見続けてきたもの HERSTORYは36年間、女性を調査してきた会社ではありません。 女性を通して、暮らしを見続けてきた会社です。 同じ40代女性でも、 ひとり暮らしなのか。 子育て中なのか。 夫婦二人暮らしなのか。 親の介護が始まっているのか。 暮らしが違えば、ブランドの意味も変わります。 私たちが見続けてきたのは、企業の言葉が、暮らしの中でどのような意味へ翻訳されるかでした。 AI時代になった今、その価値はますます大きくなっています。 AI時代にブランドが問われるもの これまで企業は、検索されることを考えてきました。 これからは、理解されることを考える時代です。 AIが企業を説明し、生活者がその意味を受け取る。 そのとき、企業が伝えたいこと、AIが理解したこと、生活者が受け取ったこと。 この三つが一致している企業ほど、強いブランドになります。 ブランドとは、発信した情報ではありません。理解された意味です。 おわりに AIは企業の情報を整理できます。 しかし、その言葉が暮らしの中でどんな意味になるのかは、生活者に聞かなければ分かりません。 私たちHERSTORYは、女性インサイトを通して、暮らしの変化を見続けてきました。 AI時代だからこそ、その視点はさらに重要になると考えています。 次回は、「AIはブランドをどう理解しているのか」について、もう一歩踏み込んで考えてみたいと思います。 HERSTORY NOTE AIはホームページだけではなく、企業全体の情報からブランドを解釈している。 AI時代に問われるのは、検索されることではなく、正しく理解されることである。 ブランドとは、企業が伝えたことではなく、生活者が理解した意味である。 HERSTORYは女性インサイトを通して、企業の言葉が暮らしの中でどう翻訳されるかを見続けてきた。 筆者プロフィール 日野佳恵子 女性インサイト総研 株式会社ハー・ストーリィ 代表取締役社長一般社団法人女性のあしたアカデミー 代表理事 島根出身。1990年創業。女性の購買行動とライフコースの関連がマーケティングに影響を及ぼすことに着眼し、女性インサイト理論を独自開発。学習院大学、成城大学、大阪公立大学の専門教授らと「男女の消費行動研究」を発表している。クライアントは生活消費財を中心にメーカーから小売まで幅広く、「女性顧客起点の専門家」として多数の企業のアドバイザーを行う。 <代表的な受賞ほか> 経済紙Forbes Japan「日本の社長100人」、日経WEBCOMPANYが選ぶ「21世紀 時代のキーパーソン51人」、日経ウーマン・ウーマン・オブ・ザ・イヤー2003リーダー部門第9位、2013世界女性リーダースティビーアワード銀賞、日本の残したい企業100社、2021Forbes Woman Award300人未満全国第2位など個人、企業活動と両面で広く評価されている。 下記よりメールマガジンの登録をいただくと、最新記事の更新をお知らせいたします。ご登録のうえ、配信を楽しみにお待ちください。 <連載ページ> 【第1回】女性は企業の言葉をどう翻訳しているのか 【第2回】AIはブランドをどう解釈しているのか 【第3回】女性は企業の言葉をどう翻訳しているのか 【第4回】ブランドは「伝えたこと」ではなく、「理解されたこと」で決まる 【第5回】AIが進化するほど、生活者インサイトの価値は高まる 【第6回】暮らしを見なければ、ブランドは理解できない 【第7回】AIに選ばれる企業より、人に理解される企業へ 【第8回】一次データがブランド資産になる時代 【第9回】ブランドは、生活者との対話で育つ 【第10回】HERSTORYが考えるAI時代の生活者理解

  • 地方移住に関心がある人は46.8%にのぼるも、85.7%が「未行動」。

    障壁は「資金不安」と「ノウハウ不足」。 人気の移住先1位は「長野県」!――地方移住・空き家活用意識調査 近年、物価高や住宅価格の高騰、将来への経済的不安、子育て環境への関心などを背景に、地方移住や空き家活用への注目が高まっています。 女性インサイト総研 株式会社ハー・ストーリィ(本社:東京都世田谷区、代表取締役:日野佳恵子)では、全国の生活者を対象に、移住意向や理想の住環境、古民家・空き家活用に関する意識調査を実施しました。 調査の結果、地方移住に関心がある人は46.8%に上る一方、具体的に行動へ移せていない人が85.7%を占めることが判明。行動に移せない理由としては「資金面の不安」や「移住ノウハウ不足」が上位となりました。また、古民家を活用した住まいへの関心も高く、空き家リノベ「家継ぎ」サービスについては68.4%が魅力を感じると回答しました。 ■ 調査概要 調査名称:「移住に関する調査」 調査期間:2026年7月15日〜7月23日 調査対象:全国の20歳以上の男女528名 調査方法:インターネット調査 実施機関:株式会社ハー・ストーリィ ■ 主な調査結果 ①「地方移住への関心は46.8%。 約半数が地方での暮らしに興味 Q.あなたは、現在お住まいの地域とは別の地域への移住にどの程度興味がありますか。(n=344) 地方移住に「とても興味がある」「やや興味がある」と回答した人は46.8%と、約半数が移住に関心を持っていることが分かりました。 ②人気の移住先1位は長野県(14.3%) Q.現在、移住先として考えている地域として当てはまるものを全てお選びください。(n=161) 順位 希望都道府県 1位 長野県(14.3%) 2位 北海道(11.2%) 3位 神奈川県(9.9%) 4位 千葉県(9.3%) 5位 栃木県 / 沖縄県(各 7.5% ) 6位 静岡県(6.8%) 7位 東京都 / 兵庫県 / 福岡県 / 鹿児島(各 6.2% ) 8位 宮城県 9位 山梨県 / 京都府 / 広島県(各 5.0% ) 10位 埼玉県 / 滋賀県 / 大阪府(各 4.3% ) 自然環境に恵まれながらも、生活環境や都市部へのアクセスを確保しやすい地域が上位に挙がっており、地方でありながら暮らしやすさを備えたエリアへの関心が高いことが分かります。 ③移住検討者の8割以上が具体的な行動に移せていない Q.現在の移住に関する検討状況について、最も近いものをお選びください。(n=161) 移住を検討している人のうち、約8割が「具体的な行動に移せていない」と回答しました。 (「特に具体的な行動はしていない」(61.5%)と「まだ漠然と考えている」(24.2%)を合わせた数値。) 多くの人が移住への関心を持ちながらも、情報収集や物件探しなどの具体的な行動には至っていない実態が明らかになりました。 ④行動に移せない要因は資金面への不安と移住ノウハウ不足 Q.移住に興味はあるものの、実際の行動に移せていない理由をすべてお選びください。(n=161) 移住を検討しながらも行動へ移せない理由として最も多かったのは、「資金面への不安」(49.1%)でした。 次いで、「何から始めればよいかわからない」(46.0%)、「仕事の見通しが立たない」(32.3%)が続き、費用面だけでなく、移住までの進め方や情報不足も大きな障壁となっていることが分かりました。 ⑤古民家へ求められる「改修済み」「設備が整った住まい」 Q.仮に、古い日本家屋に住むとした場合、どのような条件であれば検討したいですか。(n=344) 古民家を住まいとして検討する際には、「リフォーム済みであること」(60.2%)、「設備が一定整っていること」(58.1%)、「改修・購入費用の補助があること」(56.4%)が上位となりました。 この結果から、移住希望者は古民家そのものよりも、「安心してすぐ暮らせる状態」の住まいを求めていることが分かりました。 ⑥空き家リノベ「家継ぎ」サービスに魅力を感じる人は68.4% Q.(家継ぎサービスについて閲覧後)このサービスは魅力的だと思いましたか。(n=527) 空き家リノベ「家継ぎ」サービスについて、「非常に魅力を感じる」「やや魅力を感じる」と回答した人は68.4%となり、約7割が魅力を感じていることが分かりました。 今回の調査では、移住希望者が求めているのは、単に古民家へ住むことではなく、「安心して暮らし始められる住まい」や「移住を後押しする仕組み」であることが明らかになりました。 こうした生活者ニーズに応える取り組みとして、空き家リノベ「家継ぎ」サービスへの期待も高いことがうかがえます。 ■ 考察:地域の魅力発信だけでは、移住は進まない。移住促進の鍵は、「住まいの安心」と「情報提供」 今回の調査では、地方移住に関心を持つ人は46.8%と約半数にのぼる一方、移住を検討している人の85.7%が、具体的な行動に移せていないことが分かりました。移住への関心は決して低くないものの、資金面への不安や「何から始めればよいかわからない」といった情報不足が、行動をためらう大きな要因となっています。 また、移住先として人気を集めたのは、豊かな自然と生活利便性を兼ね備えた地域でした。さらに古民家を検討する際には、「リフォーム済み」「設備が整っている」「費用補助があること」が重視されており、生活者が求めているのは、安心して新生活を始められる住環境であることが明らかになりました。 今後の移住促進では、地域の魅力を発信するだけではなく、改修済み住宅の提供や補助制度の充実、移住までの相談・伴走支援など、移住希望者が安心して一歩を踏み出せる仕組みづくりが重要になると考えられます。 移住希望者の不安を解消する住まいや支援体制を整えることは、移住の促進だけでなく、空き家・古民家の利活用や地域への新たな人の流れを生み出すことにもつながるでしょう。 ■ 女性インサイト総研 株式会社ハー・ストーリィについて 私たちは【女性の買う理由を世帯から読み解く】専門機関です。 日本の世帯消費の7割(※当社調べ)を握る女性。その意思決定はライフステージやライフイベントで複雑に変化します。私たちは、データや数値の背景にある女性の選択理由を掘り下げ、経営者の意思決定や商品開発、マーケティングに即活かせる調査・コンサルティングの専門会社です。 事業内容:女性インサイトマーケティング事業(専門研究/コンサルティング/専門情報出版/マーケティング支援/人材育成支援) 代表取締役:日野 佳恵子 URL:https://www.herstory.co.jp/ 移住希望者の不安を解消する住まいづくりの一例として、谷口工務店では「家継ぎプロジェクト」を展開しています。 谷口工務店が運営する、『家継ぎプロジェクト』では、空き家・古民家を活用しながら、安心して新しい暮らしを始められる住まいづくりに取り組んでいます。 プロジェクトの詳細については、家継ぎプロジェクト公式サイトをご覧ください。 ▼家継ぎ(YATSUGI) https://www.yatsugi-project.com/ 運営会社:株式会社 木の家専門店 谷口工務店

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