市場の8割を左右する女性視点マーケティング詳解vol.72

女性視点マーケティングの第一人者であり、株式会社HERSTORYの代表取締役でもある日野佳恵子による、本連載。第72回目は、”あえて”商店街を歩いたり店にいくことで得られるマーケティングのヒントを解説します。
HERSTORYは、女性視点マーケティングを専門に事業を展開しています。この連載記事では、「女性視点マーケティング」の重要性に焦点を当て、具体的な事例を交えてわかりやすく解説していきます。皆様のビジネスに新たな視点やアイデアを提供し、今後の展開に役立てていただける内容となっています。ぜひ、ご活用ください。
“あえて”の口癖から見えるアナログ体験の重要性
女性たちにインタビューをすると、最近、特に言葉の端々に出てくるのが、「あえて街を歩く」「あえて店に行く」「あえてラジオを聞く」「あえてひと駅先まで歩く」「あえて本を買ってめくる感覚を楽しむ」といった「あえて」という言葉です。
デジタル生活が日常になったことで、確かに便利にはなったものの、その逆に心身に疲れを感じ始めていることがわかります。
20代の女性たちにインタビューをすると、「あえて店で服を必ず試着して、購入する際はネットを利用する」という話も聞かれます。
「やっぱり服は着てみないとわからないから」という意味もありますが、買い物を理由に店に行くことで気持ちをリフレッシュさせたいというニュアンスも感じ取れます。デジタルがリアルな日常であるからこそのアナログトレンドが来ているといえるでしょう。これは今後、さらに強くなる可能性があります。
人の感情の読み取る力の難しさとその重要性
正直、情報過多の現在は、頭でっかちな理屈派が多くなっていると感じます。知識は豊富なのに行動が伴わないという状況です。
例えば、サッカーの知識はあるのにサッカーができないという感じです。知識と行動の一体化をトレーニングしなければ、どんどん「人の感情」をつかむことが難しくなっていくでしょう。デジタル生活が日常となったことで、自然と人と人との会話時間は減少しています。
インタビューをしていて感じるのは、年々、人の表情が乏しくなってきていることです。
特に年齢が下がるほど、その傾向が顕著です。「喜怒哀楽」はスマホの中で行うため、頭の中では感情が生まれていても顔を使うことは忘れてしまっています。スマホに集中している時間が長いと、顔の表情筋が固まってしまいます。その結果、いざという時に表情が動かず、対面での会話では感情が見えにくくなるという状況になります。
そのため、今後は「顔」を読めなくても「現象」をつかむ感覚を高めていく必要があります。
具体的には、「使っている現場を見ること」「話している姿を目にすること」「利用している状態を知ること」などです。これらの情報から顧客の「快」「不」を「感じ取れる」ようになるでしょう。ネット上での消費者動線やアクセスなどは分析できても、購入したものをどのように喜び、どのように開封し、どのように使っているのかについては、どこまでいっても「現場」に答えがあります。
麻布十番で体感する多様な消費者層とマーケティングの実践
隔月で1回、私は「体感」を目的とした「女性視点マーケティングワークショップ」という勉強会を開催しています。
男女問わず10人未満の少人数で、港区の麻布十番商店街を歩きます。この場所を選んだのは、会社に近いという理由もありますが、渋谷や青山のように若者すぎず、都会すぎず、池袋や新宿ほど個性的でもなく、巣鴨あたりほどシニアに偏っていないからです。六本木ヒルズの足元で、モデルやタレントが多く住む一方で、地元に古くから住むシニア層も多くいます。何より、週末になると老若男女が人気の菓子店やカフェ、オーガニック専門のスーパーなどを目当てに集まってくるため、観光地的な雰囲気も楽しめます。
つまり、温故知新の精神で、老若男女の様子が一堂に見て取れる場所です。中でも特に女性視点マーケティングを学ぶのに適していると思っているのは、和菓子の3店舗です。
麻布十番 豆源
麻布十番 かりんと
麻布十番 あげもち屋
これらの3店舗は至近距離に店舗を構えており、入ると思わず買ってしまうことが多いです。その意味をぜひ自分で出かけて、その場の五感でつかんでいただきたいと思います。少しだけ整理してまとめておきます。
その場の雰囲気を掴むための4つのポイント
商品パッケージのカラーバリエーションで店内を鮮やかに
3店舗とも、店舗に入った瞬間から、ワークショップに参加する女性たちは棚に並んだ色とりどりの商品パッケージに目を奪われます。陳列した商品の袋そのものを活かした色彩演出がされています。
誰にあげようかな、商品を見ながらシーンを想像
店内に入ると、「あ、お母さんが好きかも」「職場に買って帰ります」といった言葉が即座に出てきます。
買いやすさ、ギフトのしやすさ、提案が目に入る
買いやすさに関する提案は、どの店も優れています。商品は基本的に同じサイズで、ギフトも最初から目立つ場所に置かれています。すぐに価格やサイズを選んで持ち帰ることができ、発送にも対応しています。
季節提案、五感を刺激する演出がある
季節や行事に合わせた提案があり、五感にも訴えかける工夫があります。職人の姿、香り、試食など、それぞれに工夫が施されています。
次回は、スターバックスを事例に挙げながらマーケティングの学びについて解説します。
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日野佳恵子
株式会社HERSTORY(ハー・ストーリィ)代表取締役 1990年創業 タウン誌の編集長、広告代理店のプランナーを経て、結婚、出産を機に専業主婦を経験。女性のクチコミ力、井戸端好きに強い衝撃を覚え、広告よりクチコミのパワーが購買に影響を及ぼしていることを確認。一貫して男女の購買行動の違いに着目したマーケティングを実践し、女性客マーケティングという独自分野を確立。多数のコミュニティや実店舗を自ら運営。10万人の生声、3万件に及ぶアンケート分析、5万人以上の男女購買行動を研究。
【著書】
「クチコミュニティ・マーケティング」
「女性たちのウェルビーイング」
「女性たちが見ている10年後の消費社会」等ベストセラー多数。
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