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【第2回】なぜ企業は、お客様に聞くことを避けるのか。

16 時間前
読了時間: 6分

忙しい。聞き方がわからない。聞いても商品にならない。



売上は、生活者の声の中にある。 ~生活者の声を、売れる商品・サービスへ転換する実践論~


前回、「売上が伸びない会社ほど、お客様に聞いていない。」というお話をしました。

すると、ある企業の担当者からこんなことを言われました。

「その通りだと思います。でも、できないんです。」

私は、この言葉がとても印象に残りました。


企業は、お客様の声が大切なことを知っています。

「顧客第一」

「生活者起点」

「お客様の声を大切にする」

多くの企業理念にも書かれています。


それでも実際には、お客様の声を聞く機会は、それほど多くありません。

なぜなのでしょうか。

私は35年以上、企業と一緒に仕事をしてきて、その理由は大きく三つあると感じています。



理由1 忙しくて、聞く時間がない

商品企画は次の商品を考えています。

営業は売上目標に追われています。

マーケティングは広告やSNS、販促企画に追われています。

毎日やることが山ほどあります。


その中で、

「今日はお客様の話をじっくり聞こう。」

という時間を確保することは、思っている以上に難しいのです。

本来は一番重要な仕事なのに、どうしても優先順位が下がってしまう。

私は、多くの企業でその現実を見てきました。



理由2 何を聞けばいいのかわからない

仮に時間ができたとしても、次の壁があります。

「何を聞けばいいのですか。」

この質問を、本当によくいただきます。

商品の感想でしょうか。

価格でしょうか。

満足度でしょうか。

もちろん、それらも大切です。


しかし、本当に知りたいのは、その先です。

  • なぜ、その商品を選んだのか。

  • なぜ、買わなかったのか。

  • なぜ、続けているのか。

  • なぜ、離れてしまったのか。

さらに言えば、その背景にはどんな暮らしがあるのか。


ここまで聞けて初めて、商品開発やサービス改善につながるヒントが見えてきます。

質問には順番があります。

一つの質問から次の質問へ。

相手が安心して話せる流れをつくりながら、少しずつ本音へ近づいていきます。

だから、インタビューは単なる会話ではありません。

専門的な技術なのです。



理由3 一番の壁は、「聞いて終わる」こと

私は、この三つ目が最も大きな課題だと思っています。

企業は、お客様の声を集めています。

アンケートもあります。

自由回答もあります。

営業担当も現場でたくさんの声を聞いています。

それなのに、商品は変わらない。

サービスも変わらない。


なぜでしょうか。

それは、お客様の言葉をビジネスへ翻訳する人がいないからです。

例えば、お客様がこう話したとします。

「最近、料理をするのが面倒なんです。」

この言葉だけを見ると、「時短商品をつくろう。」という発想になります。


しかし、話を聞き続けると、

「毎日献立を考えることに疲れている。」

「家族から『また同じメニュー?』と言われるのがつらい。」

「仕事から帰ると、もう考える余裕がない。」

そんな背景が見えてくることがあります。

すると、本当に解決すべき課題は、「調理時間」ではなく、「献立を考える負担」かもしれません。

同じ言葉でも、読み解き方によって、商品の方向性はまったく変わるのです。



だから、生活者理解は専門職になる

私は、これからの企業には、新しい専門性が必要になると思っています。

それが、「生活者理解」です

生活者に話を聞く。

暮らしを理解する。

言葉の背景を読み解く。


そして、商品やサービスへ転換する。

この一連の仕事は、決して片手間ではできません。


私たちHERSTORYは、36年間、この仕事を続けてきました。

調査をする会社ではありません。

生活者の声を、企業の意思決定につながる形へ翻訳する会社です。

誰に聞くのか。

何を聞くのか。

どう読み解くのか。

そして、どうビジネスへ転換するのか。

そのすべてを、一つの仕事としてお手伝いしています。



おわりに

企業がお客様に聞かないのではありません。

聞きたくても、聞けない。

聞いても、

どう生かせばいいかわからない。

そこに、今の日本企業の課題があります。


だから私たちは、「調査会社」ではなく、「生活者理解業務を代行する会社」という新しい役割を掲げました。

生活者の声を聞くことが目的ではありません。

その声を、売れる商品やサービスへ転換することが目的だからです。


次回は、「アンケートを取っているのに、なぜ売れないのか。」について考えてみたいと思います。



HERSTORY NOTE

  • 企業がお客様に聞かないのではない。聞きたくても、聞けない。

  • 「何を聞くか」より、「どう聞くか」で得られる答えは大きく変わる。

  • お客様の声は、集めるだけでは価値にならない。読み解き、ビジネスへ転換して初めて価値になる。

  • 生活者理解は、これから企業に必要となる新しい専門性である。

  • HERSTORYは、生活者の声を商品・サービス・コミュニケーションへ転換する「生活者理解業務」を36年間続けてきた。



筆者プロフィール


日野佳恵子

女性インサイト総研 株式会社ハー・ストーリィ 代表取締役社長一般社団法人女性のあしたアカデミー 代表理事

島根出身。1990年創業。女性の購買行動とライフコースの関連がマーケティングに影響を及ぼすことに着眼し、女性インサイト理論を独自開発。学習院大学、成城大学、大阪公立大学の専門教授らと「男女の消費行動研究」を発表している。クライアントは生活消費財を中心にメーカーから小売まで幅広く、「女性顧客起点の専門家」として多数の企業のアドバイザーを行う。


<代表的な受賞ほか>

経済紙Forbes Japan「日本の社長100人」、日経WEBCOMPANYが選ぶ「21世紀 時代のキーパーソン51人」、日経ウーマン・ウーマン・オブ・ザ・イヤー2003リーダー部門第9位、2013世界女性リーダースティビーアワード銀賞、日本の残したい企業100社、2021Forbes Woman Award300人未満全国第2位など個人、企業活動と両面で広く評価されている。




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<連載ページ>
【第3回】アンケートを取っても売れない理由
【第4回】お客様は「商品の不満」を話しているのではない。
【第5回】ロイヤル顧客より、離脱顧客に答えがある。
【第6回】「聞く」と「読み解く」は、まったく違う仕事
【第7回】お客様の一言が、新しい商品を生む。
【第8回】売れる会社は、「顧客の言葉」で会議をしている。
【第9回】AIは分析できる。でも、お客様の本音は聞けない。
【第10回】次の市場は、いつも生活者の中から生まれる。


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