【サマンサジャパン株式会社】約30年前に「女性ライフコース」を導入。女性の職場領域の拡張で大きく発展へ
※本記事は、代表 日野の書籍「彼女は誰かのためにモノを買う」内122ページの事例記事を転載したものです。
サマンサジャパン株式会社
約30年前の1990年代、初めて女性の「ライフコース」を実践に導入した事例が、山口県周南市のビルメンテナンス会社・サマンサジャパン株式会社(導入当時の社名:建物保全株式会社)です。
求人難という課題に対し、経営側の覚悟と女性目線に合わせた柔軟な雇用スタイルを提示したことで、企業を持続・発展へと導く画期的な取り組みとなりました。
1. 課題と背景:「30代・40代の女性が集まらない」求人獲得の苦戦
当時の社長・小野英輔氏(現会長)からの最初の相談は、「若い女性が清掃員として応募して来ない。30代40代の女性にぜひ来てほしい。どうすればよいのか」というものでした。
当時のビルメンテナンス業はパート・アルバイト契約が中心で、働いている人の年代は70代〜80代が多く、30代・40代の女性を集めるのは至難の業でした。
そこでご提示したのが「女性のライフコース図」です。
30代・40代の女性は子育て期であり、収入はもちろん重要ですが、最も優先されるのは「子どものお迎えや病気などの急なトラブル時に帰れるか」という勤務の柔軟性です。働きたくても働けない条件のままでは人は集まりません。経営側が彼女たちの立場に合わせた雇用スタイルへと変更する覚悟が求められていました。
小野社長は「よい人が来なければ未来はない」という強い覚悟を持ち、この提案に全面的に理解を示されました。
2. 施策・取り組み:女性採用に必要な7つの柱と「サマンサクラブ」
サマンサジャパンでは、コンセプトに『魅せる清掃 ササっと、サマンサクラブ』を掲げ、採用する女性たちの名称を「サマンサクラブ」と命名しました。
採用側の意識改革、採用条件の見直し、労働環境整備を推進するため、以下の「7つの柱」を立てて実行しました。
チラシのビフォー(左)、アフター(右)
女性採用に必要な7つの柱
意識:採用する側の受け入れ体制構築と女性雇用の理解学習
イメージ:ロゴ、イラスト、カラーなど視覚的な演出
リクルート:30代・40代の女性が選ぶ働き方に合わせた採用(登録制勤務、短時間選択、説明会方式など)
教育:おもてなしの心、清掃技術、顧客対応、技能向上
環境:制服、使用しやすい機器、着替え室、休憩室の整備
育成:マネージャー制度、正社員雇用等のキャリアアップ施策
管理:責任者育成、労務管理、顧客管理、業務管理など
求人募集においても単なる「時間」や「場所」といったスペック情報だけでなく、「仕事を通じて生活に何が得られ、どう貢献できるのか」を伝えるチラシを作成し、発信していきました。
3. 成果とその後:募集20名に対して100名以上が応募する大成功へ
これらの取り組みにより、以下のような大きな成果が生まれました。
応募数の急増:過去は20名の募集に対して半分も集まらず苦戦していましたが、取り組み後は一度に100名以上が応募する大成功となりました。
業界を超えた注目と評価:「おもてなし」教育にも積極的に取り組み、経済産業省「おもてなし経営企業選」に選出(平成25年)されたほか、成功企業として書籍化(『サマンサ魔女の笑顔が会社を伸ばす』井上邦彦 著、生産性出版)されるなど、大きな注目を集めました。
4. 女性インサイト(深層心理)の分析:「本当はちゃんと働きたい」に応える仕組みづくり
家事や育児が生活の中心にある時期の女性にとって、短時間勤務は今でいう「隙間バイト」に近い感覚と言えます。しかし、この時期の女性たちには「本当はちゃんと働きたい」という深い本音(深層心理)が存在します。
単に「短い時間で働ける」というメリットだけではなく、以下の3つの要素を「7つの柱」に組み込んだことがポイントです。
「時間」(柔軟に働ける環境)
「やりがい」(おもてなし教育や顧客対応)
「将来に向けたイメージ」(研修やキャリア制度、正社員・マネジメント層への道)
「今はこうだけれど、いつかは……」という感情に寄り添い、成長やキャリアの道筋を体系化したことで人材の質が向上し、将来の幹部候補育成へとつながる流れが完成しました。
5. まとめ:女性のライフコースに応える価値
サマンサジャパンの事例は、「女性採用を一括りにせず、ライフコースから構築した」先駆的な成功例です。
「いま、どのライフコースを歩んでいる女性なのか」を明確にすることで、抱えている悩みやストレスが見えてきます。その解決策を施策に取り入れることで女性からの共感が生まれ、意欲の高い人材が集まる組織づくりが可能になります。


