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女性視点マーケティングを成功に導いた「ワークマン」前編

市場の8割を左右する女性視点マーケティング詳解 vol.24


女性視点マーケティング戦略コラム

女性視点マーケティングの第一人者であり、株式会社HERSTORYの代表取締役でもある日野佳恵子による、本連載。第24回目は、ワークマンの成功事例を挙げながら、女性視点マーケティングについてより詳しく解説します。


HERSTORYは、女性視点マーケティングを専門に事業を展開しています。この連載記事では、「女性視点マーケティング」の重要性に焦点を当て、具体的な事例を交えてわかりやすく解説していきます。皆様のビジネスに新たな視点やアイデアを提供し、今後の展開に役立てていただける内容となっています。ぜひ、ご活用ください。


 

客層も風土も男性色が強かったワークマン


さわやかな秋晴れが広がるなか、神奈川県横浜市の桜木町駅前に誕生した「#ワークマン女子」1号店を訪れました。

ワークマンならではの作業服・作業用品を一切置かず、アウトドア、レイン用品、スポーツウェアを主軸とした新店舗は、これまで全国に展開してきた888店舗(作業服専門店「ワークマン」662店舗/一般向けおよび作業服専門店「ワークマンプラス」226店舗)のなかでも、最大級の売場面積を誇ります。


今年で創業41年目を迎えた同社は、「高機能・高品質の商品を低価格で提供する」ことを目標に掲げ、設立以来一貫して、職人向けの防護服やレインウェア・つなぎ・とび服・安全靴などの作業関連用品を製造・販売してきました。

約300人の社員のうち3分の2以上を男性社員が占め、客層としても社内風土としても、女性が大きく関わることはほとんどありませんでした。

ところが、とあるSNSでの投稿がきっかけで、ワークマンの商品が女性の熱い視線を一気に集めるようになったのです。


売上の異常値から見えてきた新規顧客層


「『ファイングリップシューズ』という厨房用の靴が、梅雨時に急に売上を伸ばしたんです。店舗スタッフに尋ねたところ、若い女性が購入していることがわかりました」。


こう振り返るのは、営業企画部兼広報部の林知幸さんです。さらに調べていくと、この靴がマタニティシューズに適しているとすすめるSNSの投稿を見つけました。このことがきっかけで、店舗には妊婦や赤ちゃんを抱っこした女性が数多く訪れるようになったといいます。


「滑らないという靴の機能性に共感して、本来我々が想定しなかったお客様が購入してくれました。もしかしたらワークマンの作業服や靴は、一般のお客様にとって魅力的な商品に映っているのではないかという思いが頭をよぎりました」(話:林さん)

そもそも、男性作業着の市場だけでは、「1000店舗・1000億円」の売上が限界だろうという焦りもあったのですが、そんな時、ふと見つけた梅雨時の「異常値」が、新しい見込み客を掘り当てるサインになりました。


その後もワークマンで買物を楽しむ女性や一般客は増え続け、林さんの直感は確信へと変わっていったのです。

そして2018年、ついに同社は一般向けの新業態、アウトドア・スポーツウェアを多く扱う「ワークマンプラス」をららぽーと立川立飛店にオープンしたのです。


ワークマン女子を支えたアンバサダーの存在


さらにその2年後、女性を主体にした「#ワークマン女子」が初めて登場することになりました。男性向け市場からの思い切った方向転換に、お客様が先に商品に目をつけて使用してくれていました。


「今回は我々が後を追いかけただけです」と林さんは笑います。アンバサダー制度で「声」を聞く「ワークマンプラス」の店舗が増えるにつれ、女性社員の採用も徐々に増えましたが、もともと同社は女性ウェアの開発に対してさほどノウハウがなかったといいます。


そんな時、商品開発の頼もしい味方になってくれたのが、独自に採用した約30人の公式アンバサダーの存在です。ブロガーをはじめ、ユーチューバーやインスタグラマーを含めたアンバサダーたちは公募で決めるのではなく、各自の投稿を見て同社が判断しました。


フォロワー数の大小に関係なく、商品への深い愛着を感じられるユーザーに直接メッセージを送って協力を仰ぎました。30名近くいるアンバサダーのうち20名は女性というあたり、同社の女性向け商品を一から学ぼうとする熱意がよく伝わります。



次回は、後編で「女性視点マーケティング」を成功へ導いたワークマンの事例について続けて解説していきます。



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日野佳恵子

株式会社HERSTORY(ハー・ストーリィ)代表取締役  1990年創業 タウン誌の編集長、広告代理店のプランナーを経て、結婚、出産を機に専業主婦を経験。女性のクチコミ力、井戸端好きに強い衝撃を覚え、広告よりクチコミのパワーが購買に影響を及ぼしていることを確認。一貫して男女の購買行動の違いに着目したマーケティングを実践し、女性客マーケティングという独自分野を確立。多数のコミュニティや実店舗を自ら運営。10万人の生声、3万件に及ぶアンケート分析、5万人以上の男女購買行動を研究。


【著書】

「クチコミュニティ・マーケティング」

「女性たちのウェルビーイング」

「女性たちが見ている10年後の消費社会」等ベストセラー多数。

 

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