今、この瞬間を大切にするマインドフルネスな感覚が今回の調査で見えた。閉塞感が長く続いた経験から、どこか常に不安感がつきまとう。楽しめる最新情報は、インスタのハッシュタグが一番!
■事例取材・定量調査・定性調査のまとめ
|アンケート629人から見えるポイント
これから1年、旅行に行く予定はないが、コロナウイルスの影響がなければ9割が「旅行に行きたい」と回答。また、「これから1年以内に旅行に行く予定がある」と回答した人では、手軽で交通の便がいい、近隣の県に短期宿泊をするマイクロな旅行が好まれていることが分かった。今後の旅行需要回復のキーワードは「温泉」「食事目的」「自然」。
|インタビュー4人から見えるポイント
コロナウイルス感染対策のため、屋外のスポットを訪れたり、密になる環境を避けたりしながら旅行を楽しんでいることが分かった。そして、注目なのは旅先の検索方法だ。ホテル予約サイトの比較や検索エンジン使用のほか、Inst agr amを活用している。事前に「ハッシュタグ検索」で写真とクチコミをチェックし、店舗の公式アカウントで最新情報を取得するのが今のトレンドだ。
■女性トレンド総研考察
今回の調査で見えてきたのは、「今年は国内旅行で楽しみたい」というニーズとともに、「今、できることをしたい」という瞬間的な快楽へのニーズだ。どうせ短い時間、近い場所で経験するなら、今まで行ったことがない場所、知らない経験などがしたい。限定的、希少的なイベントにも興味深々。子育てママ同士の焚き火会、女性同士のサウナ、旅気分を味わえる食シリーズなど、企業の特集取材でも、「新鮮な体験」を売るサービスが見えた。また、コロナ期間中に、状況が一変した施設や遊び先も多いため、「最新情報」を得るには、インスタが一番、というのも今回は、インタビューの中で強く見えた。こうした「今を楽しみたい」という感覚は、マインドフルネスという言葉としても広がりを見せている。今年一年は、「瞬間」「未体験」がテーマになる予感だ。
■桃沢野外活動センター/加和太建設株式会社
焚き火、森林ヨガ、サウナ…”初めて体験”を求め、女性が殺到「桃沢野外活動センター」
密を避けられるコロナ禍のレジャーとして、キャンプを楽しむ人が増えている。人だらけの日常を抜けて、大自然の中で過ごすぜいたくな時間は、家族や友人同士だけでなく、女性のソロキャンパーをも惹きつけている。磁力となっているのは、従来のキャンプにはなかった数々の魅力的なプランだ。一体どのような内容なのだろうか?
COMPANY DATA
社名:加和太建設株式会社
住所:〒411-0033 静岡県三島市文教町1丁目5番15号
事業内容:建設業、不動産事業、施設運営事業など
年商: 144億7,000万円(2020年12月期)
創業(西暦年月): 1946年
桃沢野外活動センターのコテージ
■約半数は地元から! 熱心なリピーターも
現在、キャンパーたちの熱い視線を集めているキャンプ施設の1つが、「桃沢野外活動センター」だ。富士山の南側にある静岡県駿東郡に位置し、約2万70 0 0㎡の広い敷地内には一級河川の桃沢川がゆったりと流れ、水遊びも楽しめる。元々は小中学生の自然教室の場として、「桃沢少年自然の家」の名で19 8 3 年にオープン。しかし、利用者の変遷を受けて2020年7月、全面的なリニューアルを実施した。現在は、子どもから大人まで世代を問わず楽しめるレジャー施設へと生まれ変わった。
特に新型コロナ感染症の流行が始まってから、「キャンプを楽しむ方が増えたように感じる」と口を開くのは、同センターの施設運営事業部・桃沢野外活動センタークルーの福士恭平さんだ。あくまでもレジャー人口全体で見ると、キャンプ人口は4%強にとどまるため、そこまで多くないと指摘しつつも、「少しでも安全な屋外でできることとして、ベテランキャンパーから初心者までさまざまな人がキャンプを楽しむようになっています。ギア(キャンプ道具)の豊富さに夢中になったり、自粛生活を余儀なくされていたところに自然とのふれあいが心地よかったりという理由で、ファンが増えているようです」と教えてくれた。
現在同施設は、県内からの利用者が4~5割を占める。もちろん、首都圏やその他近隣県からも多くの人が訪れるが、予想外に地元地域の利用者が多いという。コロナ禍で思い切った遠出ができない中、近場でできるキャンプの面白さを初めて知り、熱心なリピーターになる人が増えている。特に目立つのが、女性のソロキャンパーだ。
■一度はやってみたい「初めて体験」がずらり
彼女たちを惹きつける最も大きな要因は、「桃沢野外活動センター」が用意した豊富な体験プランにある。テントやコテージで体験するキャンプ生活の新鮮さに加えて、陶芸や木工、ニジマス釣り、ピザの窯焼き体験、森林ヨガ、焚き火、そしてキャンプ場としては最高ランクの本格サウナなど、心惹かれる施設やプランがずらりと並んでいるのだ。
こうしたアクティビティを取り入れた狙いとして、福士さんは「アウトドアの雰囲気を気軽に楽しんでもらうこと、そして、コロナ禍の籠もりがちな時代に大人が1人でもいられる居場所を提供したいと考えました」と語った。さらに、体験プランの絶妙なチョイスについては、「一度は見たことがあるけれど、これまでやったことがないもの、かつ手軽に実現できるものを基準に選んでいます」と説明してくれた。
その中でも特に目を引くのは、「忙しいママのためのTAKIBIタイム」というママ向けのプランだ。平日の昼に集まり、焚き火の揺らぎを見つめながら自然の中で疲れを癒やすというシンプルな内容だが、育児や仕事でいっぱいいっぱいの女性たちにとっては、温もりのある極上の時間になっている。「プランの発案は利用者個人が行い、参加者を募ります。私たちは『居場所』を提供することで、ただのキャンプ場ではなく、地域コミュニティの結びつきが多く生まれやすい価値ある場所になるように努めています。今はさまざまなプレイヤーと興味深い仕事に携われることが喜びでもあり、施設運営者としてのモチベーションを維持する原動力にもなっているんです。」(福士さん)
■自分らしく生きるヒントを提供したい
現在、1カ月で1,000~10,000人ほどの利用者が訪れるが、その中には家族連れや友人同士のグループも当然多い。アウトドアクッキングや焚き火は全体的に人気があり、ファミリー層には特にニジマス釣りやピザ窯体験、また若い男性の間ではサウナ、そしてソロキャンパーは男女共に、サイトアレンジ(テントやタープ設置場所のレイアウト作り)やYouTube撮影、Instagram撮影を楽しむ姿が頻繁に見られるという。「ピザ窯で焼く野菜の甘さが忘れられず、何度も来てしまう」「焚き火が面白く、リラックスできる。1人でも十分に楽しい」「サウナ、天然の水風呂(渓流)、森林浴のループがたまらなくラグジュアリー」など、利用者の多くが充実したアクティビティに満足しているようだ。
長引くコロナの影響で、ますます注目を集める同施設だが、今後はヘルシー志向の女性層を積極的に取り入れていきたいという。「5月14~15日には『わたしらしく、トータルリトリート』という女性限定イベントを、1泊2日で行います。心も体もリフレッシュするために、『瞑想や写経』『ヨガ』など心の回復、『サウナ』『ヴィーガンバーベキュー』『精進料理』など体の回復、さらに、新たな自分に向き合う『死の体験旅行』などを準備中です」と福士さん。豊かな自然の中で、より「わたしらしく」生きられる体験を提供できればと意気込む。
ここ2年、気兼ねなく旅行できる機会を奪われてしまった利用者にとって、桃沢の大自然は安心や癒やしを与え続けてくれた。どんな世代でも楽しめるこの貴重なスポットは、コロナ終息後もますます賑わい続けるに違いない。
■女性インサイト調査データ掲載元
HERSTORY REVIEW 2023年5月号 Vol.58→詳しくはこちら
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