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【イオンリテール株式会社東海カンパニー】ママたちの声をヒントに作ったフードコートの「にこにこカウンター」


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イオンリテール株式会社東海カンパニー


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 2023年11月23日の勤労感謝の日、日経新聞朝刊に「#これ誰にお礼言ったらいいですか」という全面広告が掲載された。誌面の真ん中には、赤ちゃんがすっぽり入っているカウンターテーブルの写真が載っている。パーソルグループが勤労感謝の日に「ありがとう!を言いたい名仕事」を募集し、そこに応募された一つの写真だ。


「これ」を実現したのはイオンリテール株式会社の井上良和氏であり、ハー・ストーリィがサポートした。2017年のイオンスタイル豊田オープン時に続き、丸6年が経過した今もこうして喜ばれ、バズったことは驚きだ。久しぶりに井上氏と日野佳恵子が、「これ」にまつわる開発秘話などを語り合った。




イオンリテール株式会社

東海カンパニー デジタル営業推進部 部長

井上 良和 氏


2000年にイオンリテール㈱入社。2009年にイオン相馬店店長に就き、以後はイオン七戸十和田駅前店開設委員長、イオン盛岡店店長、北新潟事業部長、南千葉事業部長となり、2016年にイオンスタイル豊田開設委員長となる。2019年にイオン岡崎南店長、2021年から現職。



 


開発当初もSNSでバズッた!カウンターテーブルに再び「ありがとう」


日野:2017年に愛知県豊田市にイオンスタイル豊田という総合スーパーがオープンすると、このテーブルを喜ぶママたちの声がSNSで大きく広がり、イオンの他店舗、他社スーパーなどでも設置が進みました。当時の開設委員長としてこのテーブルを開発した井上さんは6年経ったいま、新聞広告で「ありがとう!を言いたい名仕事」として紹介され、SNSで再びバズっている状況をどうご覧になりますか。


井上:このテーブルが、ママたちの買い物や生活が豊かになることに貢献できていることを非常にうれしく思います。逆に言えば、6年経ってもまだ子育てするママに便利な社会環境、寄りそう社会になっていないことにも気付かされました。


日野:ハー・ストーリィは、イオンスタイル豊田の開設準備期間に地域在住の女性たちからリアルな声を伺い、お店づくりに反映させるお店づくりサポータープロジェクト「ミセサポ」という取り組みを行いました。その際、井上さんが地域の方の暮らしぶりに注意深く耳を傾け、一つひとつカタチにしていく姿が印象に残っています。


井上:豊田市は、トヨタ自動車の関連企業が多く、未就学児や小学校低学年のお子さんを持つ家庭と、定年退職された方が多くお住まいで、教育にすごく熱心な地域です。お客さまの7〜8割は女性で、近隣にショッピングモールなどの大型施設があり、お店を選択するのは多くの場合、ママなど女性です。だからママたちに便利な施設をつくり、足を運んでいただきたいと思いました。



ママのお困りごとにヒントあり!2人乗りカート、ベビーパーキング導入


井上:穴の空いたテーブルは、フードコートで離乳食を食べさせる時の困りごとについて聞いた時のママのコメントが発端でした。私自身も当時、小さい子どもがいてフードコートで食べさせる時にすごく苦労した経験があります。「子どもが落ち着いて食べてくれない」という言葉がキーワードになりました。「それはなぜですか」と聞くと、「目に入るいろいろな人や物に興味を持つので、落ち着いて食べられない」という答え。さらに、「子どもはどうすると一番落ち着きますか?」と聞くと、「正面でママを見ている時です」と返ってきました。ここで、赤ちゃんとママが向かい合わせに座って食べる「にこにこカウンター」のアイデアが浮かんだのです。


日野:同じように困りごとの声から、子どもの一人が座って一人が立つという2人乗りカートや、ベビーカーの出し入れにも便利なように広いスペースを確保したベビーパーキングも設置しましたね。


井上:カートは既製品を探したところ、業者を見つけることができました。イオンスタイル豊田で導入すると瞬く間に話題となり、新たに製作されたカートはホームセンターや他のスーパーなどでも続々導入されました。これらもママたちの「不便だ」という声を元に、どうしたらその「不」を解決できるか、ひたすら考えた結果です。


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ベビーカーの出し入れにも便利なように広いスペースを確保した「ベビーパーキング」

不便の声を深掘りし、「不」の解消へ。前例ない取り組みも熱意でカタチにする


日野:女性の「不」を解決するための商品やサービスが店舗開発につながった好例だと思います。一方で、前例のないことに取り組んだり経費がかさむことへの何らかの声はありませんでしたか。


井上:なかったわけではないです。3階の子ども用品売り場近くに設置しているおむつ交換や授乳ができるベビー休憩室を1階のフードコートの一角にも設置した時は、2カ所に設置する理由を説明する必要がありました。でも、食事中に3階まで足を運んでいただくのは「ママと子どもに優しいお店」という本来の目的から外れると説得しました。チャレンジには説明責任が伴いますが、熱意と裏付けるお客さまの声がとても大切です。お客様第一の視点で果敢にチャレンジすることは、変革し続けるイオンだからできることだと思います。

 2年前、イオンリテール㈱東海カンパニーデジタル・営業推進部に着任した時はコロナ禍だったこともあり、ネットスーパーがママたちに好評でした。ネットスーパーは便利です。でも、配達を家で受け取ることに制約が生じます。そこでイオンは、配達だけでなく店舗カウンターやドライブスルーでご都合に合わせて受け取れるピックアップというシステムを整えました。ただ、店舗によってお渡しする場所がカウンターだけ、ドライブスルーだけなどバラ付きがありました。そこで、まずは東海地域全店舗のサービスレギュレーションを半年で一律にしたところ成果が上がり、全社での取り組みへと結びつきました。どこの店舗も同じサービスレベルになっていると、利用者の方が転勤しても「やっぱりイオンは便利だね」と認知していただけると思っています。



「助かった」「うれしい」があふれる楽しい暮らし、優しい社会へ


日野:井上さんのお話からは、本当に困っていた人たちが「よくぞ、気がついてくれました!」と、「不」の解決策を探し当て実現してくれたことに対する感謝の思いを持つから、手掛ける取り組みや商品がバズるように思えます。特に女性は共感性が高いので、自分が助かったから他人も助けたいとか、私がうれしかったからみんなもコレを使ってみたら、といった気持ちが広がっているのでは。


井上:もしかすると、私と同じ話を聞いても、それが「不」だと思わない人もいるかもしれません。さらに言えば、「不」の核心部分までたどり着けなければ、善かれと思ったサービスがお客さまへの押し付けになることもあり得ます。そこに気をつけながら、若い世代にもこうした視線や思いを受け渡していきたい。「不」の解決には大きなパワーが必要ですが、解消できたらその先に未来があると感じています。

 小さい子どもがいるママたちは簡単に手早く買い物を済ませたいので、圧倒的に「家から近い店」の優先順位が高くなる現実がある中で、条件が違っても足を運びたくなる便利な施設にしようという思いが、イオンスタイル豊田開設委員長としてのこだわりでした。子どもと1日中楽しく過ごせて、ママ友とも会えるような場所になれば、その店に来ること自体が目的になります。子どもがいるママたちの生活が豊かで楽になる優しい社会環境が広がる流れを、これからもどんどん発信していきたいと思います。


日野:全国展開し、大勢の方と接するチェーンストアだからこその役割といえますね。これからも「不」の声を拾い、発想もアップデートしながら解決を実践し続け、人々の暮らしを豊かにしていってください。


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