真実は、暮らしの中にある。【第2回】AIはブランドをどう解釈しているのか
- 7月24日
- 読了時間: 6分
更新日:7月31日
AI時代のブランドマネジメント~AI時代になるほど生活者理解が重要となる~

「この会社を一言で説明してください」
最近、私は生成AIにこんな質問をすることがあります。
「○○という会社を一言で説明してください。」
返ってくる答えは、意外なものでした。
AIは会社概要をそのまま読むのではありません。
「○○分野に強みを持つ会社です。」
「△△という価値観を大切にしている企業です。」
まるで初対面の人を紹介するように、一つの人物像として企業を説明するのです。
このやり取りを繰り返すうちに、私は一つのことに気付きました。
AIは企業を「理解」しているのではありません。
企業という存在を、自分なりに「解釈」しているのです。
AIは企業全体を読んでいる
以前の検索では、生活者自身が情報を集めていました。
ホームページを見る
商品ページを見る
口コミを読む
ニュースを探す
SNSを見る
そして最後は、自分で判断していました。
ところが生成AIは違います。ホームページだけではありません。
プレスリリース
ニュース記事
採用ページ
社長メッセージ
商品紹介
第三者の記事
公開されている情報を横断的に読み込み、「この会社とは何者なのか。」という一つのブランド像を組み立てています。
つまりAIは、一つのページを読んでいるのではなく、企業全体を読んでいます。
AIは企業を一人の人として見ている
私は、この変化をとても興味深く感じています。
私たちも誰かを紹介するとき、
「あの人は誠実な人です。」
「挑戦する人です。」
「人を大切にする人です。」
と、一人の人物として語ります。
AIも企業に対して同じことをしています。
この会社は、
挑戦する会社なのか
技術を大切にする会社なのか
生活者を大切にする会社なのか
社会課題に向き合う会社なのか
企業全体から、その人格を読み取ろうとしているのです。
AIの答えは、企業自身の鏡でもある
もちろん、AIの回答が常に正しいわけではありません。
AI自身も、「情報が不完全な場合があります。」と前置きすることがあります。
しかし、その理由を考えると興味深いことが見えてきます。
企業から発信されている情報が一貫していなければ、AIも一つのブランド像を組み立てることが難しくなるのです。
ホームページでは「革新」
採用ページでは「人を大切にする会社」
営業資料では「価格競争力」
SNSでは親しみやすさ どれも間違いではありません。
しかし、それらをまとめたとき、「結局、この会社は何を大切にしているのだろう。」という印象になることがあります。
人が理解しにくいブランドは、AIも理解しにくいブランドです。
ブランドは情報の総和になる
これまでブランドというと、
ロゴ
広告
デザイン
テレビCM
そんなものを思い浮かべることが多かったでしょう。しかしAI時代には、それだけではありません。
企業が社会へ発信している情報すべてが、一つのブランドになります。
ホームページだけでは足りません。
SNSだけでも足りません。
商品説明だけでも足りません。
企業全体として、
誰のために存在し、どんな価値を届けようとしているのか。
それが一貫していて初めて、AIはブランドを説明できます。
しかし、それでも終わりではない
ここで、一つ忘れてはいけないことがあります。
AIが企業をどう解釈するかと、生活者がブランドをどう理解するかは、同じではありません。
AIは情報を整理して企業像をつくります。
一方、生活者は、そのブランドを自分の暮らしに置き換えて意味づけます。
この違いは、とても大きな違いです。
AIが「高品質」と説明しても、生活者は「価格が高そう」と受け取るかもしれません。
AIが「革新的」と説明しても、生活者は「少し難しそう」と感じるかもしれません。
ブランドは、情報だけでは決まりません。暮らしの中で意味を持って初めてブランドになります。
HERSTORYが見てきたこと
私たちは36年間、女性の暮らしと買物行動を見続けてきました。
同じブランドでも、ある人は「安心」と感じ、ある人は「自分には関係ない」と感じます。
企業の言葉は、そのまま生活者へ届いているわけではありません。
暮らしの中で、一人ひとり違う意味へ翻訳されています。
だから私たちは、AIがブランドをどう解釈するかだけでなく、生活者がその言葉をどう受け止めているのかを確かめることが、これからますます重要になると考えています。
おわりに
AIは企業を説明できます。
しかし、ブランドの意味を決めるのは、最後は生活者です。
AIがブランドをどう解釈するのか。生活者がブランドをどう意味づけるのか。
この二つをつなぐことが、これからのブランド戦略で重要になります。
次回は、「女性は企業の言葉をどう翻訳しているのか」について、HERSTORYが35年以上見続けてきた女性インサイトをもとに考えてみたいと思います。
HERSTORY NOTE
AIはホームページではなく、企業全体の情報からブランドを解釈している。
AIは企業を一人の人物のように説明する。
ブランドは、企業が発信する情報全体の総和として形成される。
AIの解釈と生活者の理解は一致するとは限らない。
AIが解釈するブランド。しかし、暮らしの中でブランドを意味づける女性の存在を、AIはまだ理解できない。
筆者プロフィール

日野佳恵子
女性インサイト総研 株式会社ハー・ストーリィ 代表取締役社長一般社団法人女性のあしたアカデミー 代表理事
島根出身。1990年創業。女性の購買行動とライフコースの関連がマーケティングに影響を及ぼすことに着眼し、女性インサイト理論を独自開発。学習院大学、成城大学、大阪公立大学の専門教授らと「男女の消費行動研究」を発表している。クライアントは生活消費財を中心にメーカーから小売まで幅広く、「女性顧客起点の専門家」として多数の企業のアドバイザーを行う。
<代表的な受賞ほか>
経済紙Forbes Japan「日本の社長100人」、日経WEBCOMPANYが選ぶ「21世紀 時代のキーパーソン51人」、日経ウーマン・ウーマン・オブ・ザ・イヤー2003リーダー部門第9位、2013世界女性リーダースティビーアワード銀賞、日本の残したい企業100社、2021Forbes Woman Award300人未満全国第2位など個人、企業活動と両面で広く評価されている。
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