真実は、暮らしの中にある。【第8回】一次データがブランド資産になる時代
AI時代のブランドマネジメント ~AI時代になるほど生活者理解が重要となる~

先日、ある企業の経営者から、こんな相談を受けました。
「これからAI時代になると、企業は何を発信していけばよいのでしょうか。」
ホームページでしょうか。
SNSでしょうか。
動画でしょうか。
私は少し考えてから、こうお答えしました。
「これから企業が最も発信すべきものは、広告ではありません。」
まだ世の中にない事実です。
それが、一次データです。
AIは新しい事実をつくることはできない
AIは本当に優秀です。
膨大な情報を整理できます。
比較できます。
要約できます。
仮説もつくれます。
しかし、AI自身が、新しい事実を発見することはできません。
例えば、
「今年、女性の暮らしは何が変わったのか。」
「今、生活者は何に困っているのか。」
「これから市場はどう変わるのか。」
こうした情報は、誰かが生活者へ聞かなければ、世の中には存在しません。
つまり、AIが学ぶ情報は、誰かが最初に社会へ発信した情報なのです。
一次データは未来を映している
HERSTORYでは、毎月、女性たちへ調査を続けています。
その中でいつも感じることがあります。
暮らしは、社会より先に変わります。
ニュースになる前に、暮らしが変わります。
市場が動く前に、買い方が変わります。
企業が気付く前に、女性たちの毎日の選択が変わっています。
私たちは、その小さな変化を見ています。
だから一次データとは、未来を映している情報なのです。
AI時代は「誰が言ったか」が重要になる
これまでインターネットでは、情報量が価値でした。
しかしAI時代になると、AIは、その情報を誰が発信したのかも見ています。
どんな方法で調査したのか。
根拠はあるのか。
社会的な信頼性はあるのか。
つまり、情報そのものだけではなく、情報の信頼性がブランドになります。私は、ここがAI時代の最も大きな変化だと思っています。
ブランドは「意味」を発信する
ブランドというと、広告を思い浮かべる方が多いかもしれません。
しかし、私はこれからのブランドは、広告だけでは育たないと思っています。
企業が、社会へ新しい気づきを届ける。新しい基準を提案する。新しい暮らしを言葉にする。
その積み重ねが、ブランドになります。
例えばHERSTORYでは、
「冷凍庫140L時代」という新しい基準を社会へ提案しました。
「女性の約8割が生活不安を感じている。」という事実を発信しました。
「子どもの目の健康」というテーマを社会へ届けました。
これらは、商品を宣伝したのではありません。
暮らしの変化を社会へ伝えたのです。
その結果、企業そのものへの信頼が積み重なっていきました。
HERSTORYが考えるPR
私は、これからのPRは、商品の宣伝ではないと思っています。
社会へ、新しい意味を提案することです。
生活者に聞き、暮らしの変化を見つけ、社会へ届ける。
その積み重ねが、企業のブランドになります。
そして、AIはその事実を学び、企業を理解していきます。
だから私は、PRとは、広告活動ではなく、ブランド資産を積み上げる活動だと考えています。
一次データは企業だけの資産ではない
生活者から得られた一次データは、企業だけのものではありません。
社会に共有されることで、新しい価値になります。
例えば、「女性の約8割が生活不安を感じている。」という事実は、一企業だけの課題ではありません。
行政にも、教育にも、地域にも、商品開発にも関係するテーマです。
だから、一次データは、企業の資産であると同時に、社会の資産でもあります。
私は、ここに企業が社会と共にブランドを育てる新しい役割があると考えています。
おわりに
AI時代になるほど、企業が自ら生み出した一次情報の価値は高まっていきます。
AIは、その情報を学び、社会は、その情報を共有し、生活者は、その情報によって新しい選択をします。
これから企業に求められるのは、情報を集めることではありません。社会に新しい意味を生み出すことです。
それが、これからのブランド資産になると考えています。
次回は、「ブランドは生活者との対話で育つ」というテーマで、HERSTORYが35年以上続けてきた「対話」の価値についてお話ししたいと思います。
HERSTORY NOTE
AIは新しい事実を生み出すことはできない。
一次データは未来を映す情報である。
AI時代は、情報量よりも「誰が発信した情報か」が重要になる。
PRとは商品の宣伝ではなく、社会へ新しい意味を提案する活動である。
一次データは企業資産であると同時に、社会資産でもある。
筆者プロフィール

日野佳恵子
女性インサイト総研 株式会社ハー・ストーリィ 代表取締役社長一般社団法人女性のあしたアカデミー 代表理事
島根出身。1990年創業。女性の購買行動とライフコースの関連がマーケティングに影響を及ぼすことに着眼し、女性インサイト理論を独自開発。学習院大学、成城大学、大阪公立大学の専門教授らと「男女の消費行動研究」を発表している。クライアントは生活消費財を中心にメーカーから小売まで幅広く、「女性顧客起点の専門家」として多数の企業のアドバイザーを行う。
<代表的な受賞ほか>
経済紙Forbes Japan「日本の社長100人」、日経WEBCOMPANYが選ぶ「21世紀 時代のキーパーソン51人」、日経ウーマン・ウーマン・オブ・ザ・イヤー2003リーダー部門第9位、2013世界女性リーダースティビーアワード銀賞、日本の残したい企業100社、2021Forbes Woman Award300人未満全国第2位など個人、企業活動と両面で広く評価されている。
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