真実は、暮らしの中にある。【第3回】女性は企業の言葉をどう翻訳しているのか
- 4 日前
- 読了時間: 5分
AI時代のブランドマネジメント~AI時代になるほど生活者理解が重要となる~

先日、ある企業の担当者から、こんな相談を受けました。
「私たちは"安心"を伝えているつもりなのですが、なかなか伝わりません。」
ホームページにも書いてある
広告でも伝えている
営業も説明している
それでも生活者に話を聞くと、「価格が高そう。」「私には関係なさそう。」 そんな印象を持たれていました。
企業は「安心」を伝えていたのに、生活者には違う言葉として届いていたのです。
私は、このような場面を35年以上見続けてきました。
女性は企業の言葉を、そのまま受け取らない
企業は商品を説明するとき、
高品質
安心
時短
機能性
サステナブル
という言葉を使います。
しかし女性は、その言葉を一度、自分の暮らしの中へ持ち帰ります。
そして、「私にとって、それはどういう意味なのだろう。」と考えます。
ここで企業の言葉は、暮らしの言葉へ翻訳されます。
「時短」は時間ではない
例えば、企業は「時短できます。」と言います。
すると企業は、
料理時間が短くなる
洗濯時間が短くなる
掃除時間が短くなる
そう考えています。
しかし女性は違います。
子育て中なら、子どもと話す時間が増える。
共働きなら、夜、自分の時間が少し戻ってくる。
介護中なら、気持ちに余裕ができる。
つまり女性は、時間を買っているのではありません。
時間によって生まれる暮らしを買っています。
同じ40代でも、まったく違う
HERSTORYでは35年以上、女性への調査とインタビューを続けてきました。
その中で分かったことがあります。同じ40代女性でも、まったく違うブランドを見ています。
ひとり暮らし
夫婦二人暮らし
子育て中
親の介護中
同じ年代でも、暮らしが違えば、ブランドの意味は変わります。
年代ではなく、暮らしが、ブランドを翻訳しているのです。
女性は商品ではなく、暮らしを選んでいる
私たちは何万件もの自由回答を読み、数え切れないほどインタビューをしてきました。
そこで繰り返し聞いた言葉があります。
「主人が喜ぶから。」
「子どもが安心して食べられるから。」
「朝の気持ちが少しラクになるから。」
「疲れて帰っても笑顔でいられるから。」
誰も、商品の性能だけを語りません。AIはここまでは分からない
女性が選んでいるのは、商品そのものではありません。
その商品によって変わる暮らしです。
私は、この一文こそHERSTORYがたどり着いた答えだと思っています。
AIはここまでは分からない
AIは、公開されている情報を整理できます。
企業情報も理解できます。口コミも集められます。
しかし、暮らしの中で、「なぜその商品を選んだのか。」という意味までは分かりません。
仕事を終えて帰宅し、夕食をつくり、子どもを寝かせ、ようやく一人になった夜。
そのとき女性が、「少しだけ自分を大切にしたい。」と思って化粧品を選ぶ。
そんな暮らしの意味は、データだけでは見えてきません。
だから私は、AI時代だからこそ生活者へ直接聞く価値はこれまで以上に高まると思っています。
HERSTORYが見てきたこと
HERSTORYは、女性を調査してきた会社ではありません。 女性を通して、暮らしを見てきた会社です。
企業の言葉と、生活者の言葉。その間には、いつも少しズレがあります。
私たちは36年間、そのズレを見つけ、
企業の言葉を、暮らしの言葉へ翻訳してきました。
今になって振り返ると、HERSTORYが取り組んできた仕事とは、
まさにブランドの意味を翻訳する仕事だったのだと思います。
おわりに
企業は「伝えた。」と思っています。
しかし、生活者は「そうは受け取っていない。」ということが少なくありません。
ブランドとは、企業が語る物語ではなく、生活者が「これは私のことだ。」と思えた瞬間に生まれるものです。
次回は、「ブランドは『伝えたこと』ではなく、『理解されたこと』で決まる」というテーマで、ブランドの本当の姿について考えてみたいと思います。
HERSTORY NOTE
女性は企業の言葉を、そのまま受け取ってはいない。
女性は暮らしの中でブランドの意味を翻訳している。
女性が選んでいるのは商品ではなく、その商品によって変わる暮らしである。
AIは情報を整理できる。しかし暮らしの意味までは理解できない。
HERSTORYは、女性を研究している会社ではない。女性を通して、暮らしを研究している会社である。
筆者プロフィール

日野佳恵子
女性インサイト総研 株式会社ハー・ストーリィ 代表取締役社長一般社団法人女性のあしたアカデミー 代表理事
島根出身。1990年創業。女性の購買行動とライフコースの関連がマーケティングに影響を及ぼすことに着眼し、女性インサイト理論を独自開発。学習院大学、成城大学、大阪公立大学の専門教授らと「男女の消費行動研究」を発表している。クライアントは生活消費財を中心にメーカーから小売まで幅広く、「女性顧客起点の専門家」として多数の企業のアドバイザーを行う。
<代表的な受賞ほか>
経済紙Forbes Japan「日本の社長100人」、日経WEBCOMPANYが選ぶ「21世紀 時代のキーパーソン51人」、日経ウーマン・ウーマン・オブ・ザ・イヤー2003リーダー部門第9位、2013世界女性リーダースティビーアワード銀賞、日本の残したい企業100社、2021Forbes Woman Award300人未満全国第2位など個人、企業活動と両面で広く評価されている。
下記よりメールマガジンの登録をいただくと、最新記事の更新をお知らせいたします。ご登録のうえ、配信を楽しみにお待ちください。
<連載ページ>



