真実は、暮らしの中にある。【第4回】ブランドは「伝えたこと」ではなく、「理解されたこと」で決まる
- 2 日前
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AI時代のブランドマネジメント ~AI時代になるほど生活者理解が重要となる~

ある企業のブランド担当者と話をしていたとき、私はこんな質問をしました。
「御社のブランドを、お客様は一言でどう説明していると思いますか。」
少し考えたあと、その方はこう答えました。
「安心感のある会社、でしょうか。」
そこで実際に生活者へ聞いてみると、返ってきた答えは違いました。
「品質は良さそう。」
「価格が高そう。」
「私には少し敷居が高い。」
企業が思い描いていたブランドと、生活者が理解していたブランドは、少しずつずれていたのです。
私は、このような場面を何度も見てきました。
ブランドは企業のものではない
ブランドというと、企業がつくるものだと思われがちです。
しかし私は、ブランドとは、企業の所有物ではないと思っています。
ブランドは、生活者の頭の中にあります。
生活者が
「この会社は私に合っている。」
「この会社は信頼できる。」
そう思った瞬間に、ブランドが生まれます。
だからブランドは、企業が決めるものではありません。
生活者が理解した結果なのです。
「知っている」と「理解している」は違う
企業は、認知度を測ります。
ブランド認知
商品認知
広告認知
しかし、認知と理解は違います。
企業名を知っている。
CMを見たことがある。
商品名を聞いたことがある。
これは認知です。
一方で、
その会社は何を大切にしているのか。
自分にどんな価値を届けてくれる会社なのか。
ここまで理解されて初めて、ブランドになります。
私は、これから企業が測るべきものは、認知ではなく、ブランド理解ではないかと思っています。
女性はブランドではなく、「自分との関係」を見ている
HERSTORYでは35年以上、女性へのインタビューを続けてきました。
その中で気づいたことがあります。
企業は商品の魅力を語ります。
女性は、「それは私の暮らしにどう関係するのですか。」を考えています。
企業は性能を説明します。
女性は、「それで私は少しラクになりますか。」と考えています。
ブランドとは、企業が語る物語ではありません。
生活者が、「これは私の話だ。」と思える物語です。
AI時代は「ブランド理解」を確認する時代
AIは、企業の情報を整理します。
生活者は、暮らしの中で意味をつくります。
だから企業には、もう一つ必要な仕事があります。
それは、ブランドがどう理解されているかを確認すること。
企業が伝えたいブランド。
AIが解釈するブランド。
生活者が理解するブランド。
この三つは、本当に一致しているでしょうか。
もし一致していなければ、どこかでブランドの意味が変わっています。
私は、これからのブランド戦略とは、広告をつくることではなく、ブランド理解を確認し続けることだと思っています。
HERSTORYが見てきたこと
私たちは35年以上、女性の暮らしを見続けてきました。
商品への不満より、企業への誤解のほうが多いことがあります。
企業は、「ここが強み」と思っている。
しかし生活者は、まったく違うところに価値を感じている。
逆に、企業が当たり前だと思っていたことが、生活者には一番魅力だった。
そんな場面を何度も見てきました。
だから私たちは、商品を評価する前に、ブランドがどう理解されているかを確認します。
そこから、本当のブランドづくりが始まると考えています。
おわりに
AI時代になって、ブランドはますます「意味」の時代になりました。
企業が伝えたい意味。
AIが解釈する意味。
生活者が理解する意味。
この三つが重なったとき、ブランドは初めて強くなります。
だから、ブランド戦略とは、「伝える仕事」ではありません。
理解を設計し、理解を確認し続ける仕事です。
次回は、「AIが進化するほど、生活者インサイトの価値は高まる」という、一見すると矛盾しているように見えるテーマについて考えてみたいと思います。
HERSTORY NOTE
ブランドは企業が伝えたことで決まるのではない。
ブランドは生活者が理解したことで形成される。
認知と理解は異なる。
AI時代に企業が確認すべきなのは「ブランド理解」である。
ブランドの意味は、企業だけでは確認できない。女性インサイトを通して初めて、暮らしとの接点が見えてくる。
筆者プロフィール

日野佳恵子
女性インサイト総研 株式会社ハー・ストーリィ 代表取締役社長一般社団法人女性のあしたアカデミー 代表理事
島根出身。1990年創業。女性の購買行動とライフコースの関連がマーケティングに影響を及ぼすことに着眼し、女性インサイト理論を独自開発。学習院大学、成城大学、大阪公立大学の専門教授らと「男女の消費行動研究」を発表している。クライアントは生活消費財を中心にメーカーから小売まで幅広く、「女性顧客起点の専門家」として多数の企業のアドバイザーを行う。
<代表的な受賞ほか>
経済紙Forbes Japan「日本の社長100人」、日経WEBCOMPANYが選ぶ「21世紀 時代のキーパーソン51人」、日経ウーマン・ウーマン・オブ・ザ・イヤー2003リーダー部門第9位、2013世界女性リーダースティビーアワード銀賞、日本の残したい企業100社、2021Forbes Woman Award300人未満全国第2位など個人、企業活動と両面で広く評価されている。
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